「HAYABUSAはまだガンには効かない、だがそのうち効くようになる」劇場版HAYABUSA2 REBORN 大阪のDENさんの映画レビュー(感想・評価)
HAYABUSAはまだガンには効かない、だがそのうち効くようになる
HAYABUSA -BACK TO THE EARTHの劇場公開から9年、当時は東日本大震災直後であったが
HAYABUSA2〜REBORNはCOVID-19の強い影響下にある中での公開であった。
探査機をテーマにした作品は
竹内結子主演の「HAYABUSA」
インド映画「ミッションマンガル」も挙げられるが、この「HAYABUSA2〜REBORN」はこれらの作品と違い、人間を主人公としない。
強いて言えば、観客である「あなた」である。
これは「宇宙」と「あなた」の物語なのだ。
そもそも何故私達は宇宙に憧れるのか?
星空を見上げるのか?
そして何故大金を投じて宇宙を知ろうとするのか?
それを読み解くヒントがこの作品には込められている。
骨を構成するカルシウムも、赤血球に含まれる鉄も、全ては恒星の内部における核融合反応で生み出されたものだ。
この知識は恐らく学生時代に学んだ筈だが、実感を伴っている人は少ないだろう、だが、この作品を通じてそれを実感できる筈だ。
「宇宙は遠いところにあるのではなく、私達自身が、宇宙なんだ」
この一言に集約されている。
緻密な映像、磨かれた言葉、篠田三郎氏の語り口、完璧な音楽。
これらがスピリチュアルに頼らず、単に情報を羅列した所謂「退屈な授業」ではなくひとつの作品として観るものに迫る。
数冊の専門書に勝る一本である。
また、あらゆる困難を打ち砕き、任務を完遂した探査機「はやぶさ」
単なる機械に過ぎない筈だが、まるで命ある存在に思えてくる。
初代「はやぶさ」の困難に満ちた旅。
大気圏再突入にて燃え尽きるシーンは涙を禁じ得ない。
また、小惑星リュウグウからのサンプルリターンに挑んだ「はやぶさ2 」もその着陸時の場面には手に汗を握ってしまう。
また、ノントラブルと言われた「はやぶさ2 」の旅が実は決してラクなものではない事が理解できる。
『私達はこの星に生まれたその瞬間から
自分たちの知らない世界を知ろうとしてきた
大地で育った私達が 船に乗って大海に乗り出したように
ロケットを使い 宇宙という大海原に漕ぎ出す
それはなんと自然なことだろう
はやぶさの旅
それは 私達が地球に誕生したときから続けてきた
大きな旅の一部なのだ』
HAYABUSA2〜return to the universe より
ひとは誰でも視野狭窄に陥る、だが、本来我々は広い視野を持ち得る筈だ。
この作品は生き悩む人にひとつ上の視野を与えうる作品と言える。
「死にたい」と思ったら、この作品を見て欲しい。
最後まで生き抜く勇気を与えてくれる。