由宇子の天秤のレビュー・感想・評価
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人が負うもの〜良心の呵責
ある事件の真相を追うドキュメンタリーディレクターの由宇子(瀧内公美さん)の視点を通して、現実社会における厳しさ、理不尽さ、逃れる事の出来ない苦しみや悲しみをリアルに描く。
よく練られた脚本で、キャストの皆さんの緊迫感ある演技がラスト迄続く。社会生活に伴う責任について、改めて考えさせられる作品。
映画館にて鑑賞
誰でも『被害者』にも『加害者』にもなるし、その関係者にもなり得る。それを第三者⇒我が事視点で捉えた“恐るべき”作品。
観終わった後にいろんな意味で絶句してしまいました。
いや、物凄い作品です。
正直、今どきの邦画でここまで撮れるのかと思った程に。
この映画には二つの『被害者』と『加害者』の家族が出てくるワケですが、
一見して何の共通点もないと思っていたこの二つの家族。
実は両方とも同じ理由で『被害者』と『加害者』の構図が生まれているんですよね。
…オッサン達、ゴム着けなよ。いや、着けてもやった過ちに変わりはないんだが。
『加害者』にとってはほんの一回の出来心。
『被害者』にとっては信頼していた人間からの裏切りでしかない。
当初はドキュメンタリー番組のディレクターとして蚊帳の外にいた由宇子が、
自らも『加害者』の娘となった時の葛藤。
この時点では、まだ二つの“事件”の共通点は明らかになってはいませんでしたが。
いや、人間って簡単に『被害者』になるし、『加害者』にもなるし、
その関係者にもなり得るんだなと改めて恐怖しました。
きっとそれがラストの場面(由宇子が自分の写メを撮ったような感じでしたが)の意味なんでしょう。
本当に恐るべき作品です。
なお、個人的にこれは凄い…と思ったのは、母子家庭&父子家庭の自宅内の風景でしょうか。
すごいそれっぽいんですよね。
母子家庭⇒娘の物を優先。母の物は少ない。
父子家庭⇒汚部屋。めっちゃ汚部屋。鍋めっちゃ汚い。ラジオうるさい。台所生きてる?
なお、父子家庭の方は父と娘のビミョーな距離が、由宇子の介入によって徐々に狭まっていくのが観ていてめちゃめちゃリアルでした。
なお、パンフレットも購入しましたが、ドキュメンタリー取材記録もあったりして非常に読みごたえがあります。
今季イチ推しの作品です。
「報道が殺したんですよ」と「奪われました」、これカット。
天秤。その言葉を意識するおかげで、なにか問題を解決しようとするたびに、終始"あなたの良心は?"という問いかけがかぶさってくる。それはちょっかいを出してきた悪魔の声。もしくはニヤついた天使の声かも知れない。いつも、道が右と左に分かれている選択を迫り、どちらを選ぶかの判断の基準は、司法であり、社会的モラルであり、本人の立場であり、我欲であり、偽善であり、体裁であり、、、。ああ、それを言い出しているうちに、部外者のはずの自分が、なぜだか何かを言い訳してるような気分になってきた。その判断と行動の正解は、たぶん、ない。いろんなしがらみが絡み合っていれば、結論がベターと言えることはあっても、ベストとはなかなか収まらない。そう、「正論が最善とは限らないんです。」と由宇子が言うように。
目の前の由宇子は、こじれにこじれた、いくつもの難問を抱えて、どう決着をつけようとするのか。それは、うまくいくのか。それは、褒められることなのか。それは、ズルいことなのか。ああ、このまま全部を正面から受け止めてたら、潰されるよ、耐えきれなくて逃げちゃうかもよ、って画面に食らいついていると、あのラスト。
はあ、そうきたか。いや、監督はそういうふうにこっちにぶん投げてきたか。天秤を抱えて、選択と行動を試されているのは、なんだか俺じゃないのか?って、背中に冷や汗を感じた。うまいなあ。二日経ってもずっと引きずっているよ。どうしたって誰かを傷つけそうで、当然、妙案なんて浮かばないよ。
この映画は、観た各自が結論を、ましてや正解を出さなくてもいいんだと思う。ずっと、このテーマを引きずって暮らしていくことのほうが、意味があるような気がしてならない。
公開初日、舞台挨拶もない初回(しかも満席)の公開後、監督ご自身が壇上に上がって熱く映画の宣伝をしてた。その熱量で語るにふさわしい映画だった。帰りに、監督の言う"仕掛け"が気になってパンフを買おうとしたけれど、すごい混みようで断念した。監督の言葉が客に届いた、ってことなのだろう。
黙る。隠す。嘘をつく。
常にゴールをずらすように、真実を知らない観客を手玉に取るストーリーだ。
自分は、こういうタイプの作品は、本作も含めて、不快に感じて好きではない。
しかし、「物事はシロクロ決まるもんじゃない」ということが、まさに本作で監督の訴えたいことだったならば・・・。
黙る。隠す。嘘をつく。
主人公までが。
由宇子の行動は、“しがらみ”の中にあり、“しがらみ”で身動きが取れない。
萌や矢野の娘へのケアは、純粋な善意からなのか。あるいは、仕事がらみや、“贖罪”のためという、利害・打算のためでもあるのか。
しかるべき行動をとりたくても、罪を犯した人間だけでなく、周囲の人間が一網打尽に被害を受けてしまう。
テレビ局からは、捏造や隠蔽を求められる。
由宇子が陥る、そういうジリジリした様々な“囚われ”の状況を、リアリティ豊かに描写している点が、本作の最も優れているところだと思う。
キャラクターの設定は、萌の父親のキャラが定まらないこと以外は、良かった。
俳優の演技も、みな納得だ。
瀧内公美は日本の俳優では珍しく“間(ま)”を作ることができるし、川瀬陽太はしょーもない軽さを相変わらず醸し出している。
ただ、150分という長尺を使って、いろいろと詰め込んだわりには、まともに回収されないまま終わったのは残念だ。
「2つのストーリーが、一体どう交わるのだろう?」とワクワクして観ていたが、結局、由宇子が両方に関係しているだけだった。
「俺たちがつないだ(編集した)ものが真実だ」というマスコミの虚構や、困窮した父子家庭における妊娠した娘と父の関係がメインテーマかと思いきや、突然、あっさりと決着が付く。
別に“解決”などしなくて良いのだが、由宇子以外の全員が、どうなったかも分からずにフェードアウトしてしまうような作り方は、大いに不満だ。
また、ここぞという重要な静止のシーンでさえも、常にカメラだけが揺れ動いていたのはどういうわけだろう。
グッと画面に集中することが難しかった。
ドキュメンタリーを作る現場人のドキュメンタリーって感じ〜。 正しい...
ドキュメンタリーを作る現場人のドキュメンタリーって感じ〜。 正しいことは良い事?正直なとは良い事?何かが起きるとそれを喜ぶ人も居れば、それによって傷つく人も居るし救われる人も居るのは事実。それでも私は事実を知りたいと思う。真実を知りたいと思う。でも当事者になったら由宇子と同じ行動するだろうなぁ〜
滝内さんは素敵な女優さんだなぁ〜
由宇体離脱?
保身の為の方便とはいえ許されざる嘘に塗り固められた社会の表皮がバラバラと剥がれ落ちる
登場人物もれなくババが手元に残る不幸の連鎖
死ななかったのかそれとも、、
スクリーンに映し出される個々の人生の躓きに慄く
身近で今日明日にでも起こりうる残酷な現実
語り継がれる秀逸な作品
これはいい天秤
2時間半あったらしいんだけど長く感じない。脚本が巧みで、退屈だと思う瞬間がほぼなかった。ドキュメンタリー番組の取材と女子高生の妊娠に関するあれこれが同時に進行していき、どちらにも新展開があって、そのタイミングが絶妙。
最後だって、ある人物があることを言い出すのと、知らせが入るのと、順番が逆だったらまた少し意味が違ってきていた。この順番だったから、エンドロールを静かな気持ちで眺められた。
いい人も悪い人もどっちもこの世に本当はいなくて、みんな常に真ん中というか、何かと何かのバランスを取りながら生きているのだなあ的な、まさに心の“天秤”の存在を思う。
そうは言っても由宇子がいい人であってほしいと願いたくなる、魅力的なキャラクターだったから面白く見られたところはある。登場人物のかわいさと、ストーリーの硬質さや深遠さとを、映画がうまく両立させてくれたおかげ。トレードオフになりやすい2要素なのに並び立っていて、それこそ“天秤”がいいところで均衡を保ったなっていう感じがする。脚本の勝利だし、瀧内さんの勝利。
瀧内公美さんのルックスを嫌いな人はまずいないと思うけど、お芝居もまた素敵だった。話し方がとても由宇子。由宇子って人を私は今日初めて知ったわけなんだけど、彼女らしいと思った。彼女がカメラを回すと、そのカメラが捉える人は口を開いてしまう、どんなに話しづらいこともなぜか話しだしてしまうという、半ば特殊能力のような職能持ち。モスグリーンのコートも煙草も車の運転もやたら似合っていて、人たらしで気さくでそれでいて下品ではなく、出てくる女性が60歳だろうが10歳だろうがことごとく彼女にほだされ心を開いていく、それも納得できる。
上映後、パンフレットを買うと最後に心がすっきりする仕掛けがあると監督が案内していて、欲しいなと思ったけど、ロビーが大混雑すぎて買えなかった。誰か内緒で教えてください。あの子の笑顔とかかなと想像しつつ。
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