由宇子の天秤のレビュー・感想・評価
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事実と真実と、他人を責める権利
それぞれの人がそれぞれに日々を生きてるから、関係する人たちのすべての行動つまり事実の全体は当然誰も知りえない
だから、いま知ってる事実つまり皆の特定の行動をつないで、それぞれの人がそれぞれに自分なりの “真実” を形作る
そしてその “真実” はすべてを押さえてはいない知りえた事実のパッチワークだから、こうあってほしいという自分の願望がどうしても混ざるし、あるいはその全部を覆してしまう新しい事実が突然飛び出してきたりする
当事者もマスコミも視聴者も、全員がそう
つまり、誰かを全力で叩ける確証なんて、ましてや権利なんて、誰も持ちえるはずがないのだ
なるほど、なんとも鋭いところ突いてくる、これはよい作品
飽きるほど長い
ダラダラと長い
最後の決闘裁判と同じ尺なのはなぜ
もっとかいつめたよねぇ!?
言いたいこともわかるし訴えたいこともわかるが、既に使い古されたマスコミ批判と児童虐待を題材にし、特に新しい視点があるわけでもなく、かと言って是枝さんみたいに淡々と描くでもなく、いや描こうとして失敗してる
生徒にイタズラした高校教師を学校が吊し上げた結果生徒の方が自死してしまい、マスコミの執拗な攻撃に耐えられず教師も自殺してしまい、マスコミと学校の悪事を教師側と生徒側の遺族の視点から炙り出すドキュメンタリー撮ってるけど私生活が結構大変なドキュメンタリー監督のお話
全てが中途半端
最後のシーンなんか特に中途半端
何がしたいのかわからない
題材は良いよ
マスコミの切り取り合戦、性虐待、遺族に対する被害、片親の貧困
でもね、持て余しちゃってんのよ
全ての問題をサラッサラッと取り上げてるからどの問題に対しても中途半端な終わり方
これに2時間半かぁというのが感想
バランスを失う天秤
モラルと矛盾が天秤のように揺れ動く世界で、行動する由宇子が魅力の社会派ハードボイルド映画の傑作
テレビドキュメンタリーの敏腕ディレクターとして顔と父親の経営する進学塾で講師の顔の二つの異なる世界で生活を送る由宇子は、自殺した女子高生と教師の取材を精力的にする側、父親の塾でも大きな問題に巻き込まれる。
若干ネタバレあり
行き過ぎたマスコミ取材により世間から偏見の目向けられて自殺したとされる女子高生と教師とドキュメンタリー作家としてのモラルや同じマスコミ界での矛盾を主軸に置く物語として観てゆくとドラマにいくつかの変化とドンデン返しうけるミステリー的構造になっているが、個人的には、瀧内久美が演じる「由宇子」のハードボイルドな行動を交えて魅力に描く社会派ハードボイルド映画の傑作であった。
常にフラットで中立な心情と行動を規範にしている由宇子が仕事と私生活における出来事によってモラルと矛盾が、天秤の様に揺れ動く様を、瀧内久美が「由宇子」になり切って演じておりとても冷静かつハードボイルドな姿と行動が魅力的。
冷静沈着なだけではなく、筋の通らない事柄にも反発や不快感を表明する熱もあり、人に寄り添う優しさもある。(打算がない訳ではないがあの行動は一朝一夕には出来ない)
サラ・パレツキー原作の探偵V・I・ウォシャウスキーみたいな役を演じて欲しい。
ちなみに自分的ハードボイルドの定義は、探偵や刑事が悪党を殴ったり蹴ったり射殺したりする話ではなく、苦闘し揺らぎながらも自分の心情や行動規範の行う人の話です。(悪党を殴ったり蹴ったり射殺する映画も好きですが!)
監督と脚本の春本雄二郎氏は、2本分できる題材を一本の映画に巧みにまとめ上げて、「由宇子」視線を絶妙な距離感を保ちながら丹念に描写する演出で唸る出来映え。
経歴を見ると池波正太郎の人情ハードボイルド時代劇の鬼平などの助監督などを務めていたとあり「由宇子」の性格や行動にも反映されているのでは?などと想像してしまう。
登場する役者も瀧内久美や光石研はもちろんだが、塾の生徒の萌役の河合優実のアイドルにも向いている容姿にも関わらず、難役演じており萌の寂しげな佇まいと絶望を体現している。(サラサラした黒髪で少し幼い感じは、アニメ声優系やアイドル系のオタク達に人気が出そうなのに、彼らが最も嫌悪するタイプの役柄をやっているので、俳優としてやってゆく決意表明なのかも?。おや?誰か来たようだ・・)
由宇子協力者で医者役の池田良の化粧途中の歌舞伎役者の様な不気味な色気を感じる雰囲気と仕草や、萌の父親役の梅田誠弘もDVな父親な側面と娘を思いやる姿の硬軟合わせた変化みせてどちらも印象的。
以前見た『いとみち』も青森のメイド喫茶舞台にしたモエ?の入った単純なご当地映画に見せかけて、その実はしっかりとした女性応援歌だったが、本作もマスコミ批判は元より登場する殆どの女性達が世間の偏見や社会や組織の冷酷さや男達の身勝手にさらされて貧困に落ちたり傷つけられる姿を由宇子の目を通して暴いている。塾の女子高生たちさえも、軽薄な男子に対し苛立ちをあらわにしている。
上映時間が2時間半もある作品だが、瀧内久美演じる「由宇子」の魅力とそれを引き出す丁重な演出と変化のある展開で、引き込まれる良作。
これはスゴイ
これはスゴイね。登場人物の心情が全員「わかる」ってうなづくしかないし。
それが描ける事情の作り込みもすごい。
由宇子のキャラクターがいいね。
塾の先生の優しさと、ドキュメンタリー作家としての厳しさを併せ持ってて、自分の正義を貫くのかと思えば弱いところもあるし。
観終わって「じゃあ、この映画はなんだったんだろう?」と思うと、ちょっと良く分からない。
ドキュメンタリーの話と女生徒の妊娠の話があって、どちらも『嘘』という共通項はあるんだけど、扱うテーマが違うんだよね。それでテーマがぼやけたところはあると思うの。
「じゃあ、どっちかに絞れよ」って話かというと、絞ると人間の描き方が甘くなるよね。だから、これでいいのかなあ。
観てて「人って嘘を吐くよな」と思った。それで話が難しくなるんだよね。
しかし嘘を吐き続けるのは苦しくて、どこかでゲロっちゃう。そこみると「嘘を吐くなら墓場まで持ってけよ」と思ったな。ゲロった人が楽になるだけで、誰も救わないんだよね。
ドキュメンタリーに対するテレビ局側の態度も面白かった。脚色しちゃいけないんだけど、番組としての分かりやすさを求めるとそうなるよね。そこがテレビの限界で、そもそもテレビは報道機関じゃないんだよ。
そんなこんなを思いながら、とにかく「人間描くのスゲエ」って作品だったよ。
地味なのに新鮮。独自の美学で作られた映画
誰にも共感できない
マスコミによる不正な報道を追求するドキュメンタリー監督自身が、同様の事件に巻き込まれてしまい、悩みつつも解決を目指すというお話だが…
登場人物の全員が陰と陽の姿を持ち、誰も正しい答えを出せそうにないが、その中で生きていかないといけないという試練にさらされる…
見ていると疑問に感じることもたくさんあるのだが、結局は誰も答えを出せないまま…
あなたならどうしますか?と問われ続ける気がした。
脚本は素晴らしいと思います。
でも、見ていてどの登場人物にも嫌悪感ばかりを抱いてしまった。
こんな状況でこんな言動無理でしょ、と思うことが多かった。
自殺した先生の嫁さんは、秘密を墓場まで持っていくべきだったでしょう。
そのために番組を没にした監督は、筋は通していると思いますが。
気になったことは、
ちょっと冗長なシーンがいくつかあったこと。もう少し短くできるかも。
ラストシーン、あれいう必要あったかな?DNA鑑定して結論出せばいいだけでは(お金かかるし同意とれるかどうか難しいが)
妊娠初期であれば(医者の言っていたように)同意書を偽造して堕胎するのが現実的かも…と感じました。ばれないようにできなくもないです。ドキュメンタリー監督ならその辺は調べればすぐに分かったのでは。
俳優さんたちの演技は素晴らしいと思うがもう少し感情を露出するシーンが欲しかった(トイレで声を殺して泣くとか、父親をぶん殴るとか)
もう少し撮影の時間があれば、もっと良い作品になっていたかもしれません。
鑑賞する側だけでなく、本作の作り手にも「天秤」を突きつける一作。
表題の「天秤」とは、物理的な秤ではなく、善悪の評価を示す概念です。主人公のドキュメンタリー作家、木下由宇子(瀧内公美)は、ある事件についての番組製作を手がけ、真相を追求するために被害者側、加害者側の双方に肉薄していきます。その過程で彼らが報道によって傷つけられ、懊悩していることを知ることになるのですが、職業的使命に基づいて真相を追求していきます。しかしある件により彼女自身がまさに追っていた当事者の立場に立たされ、さまざまな決断を強いられるようになります。
作中、彼女が様々な場面で行う選択は、強固な意思と確信的な言動によって、それなりに正当性があるように見える一方で、偽善的であったり、非道徳的としか言いようのない面もあります。どのように振舞っても何かの歯車が狂う状況に、彼女も、その周囲も追い込まれていき、それを目撃している観客側も、彼女の選択を受け容れるべきなのかどうか、わからなくなってきます。このように本作は、ネット社会の問題点をえぐるといった次元に留まらない、「正しさ」とは何か、「正しさを基準として行動選択することが常に”良いこと”なのか」という、普遍的な問いを内包しています。それでいて物語としての面白さをきっちり保っているところに監督の優れた力量が示されています。
本作は、高所に立って観客の道徳観に揺さぶるをかけるといった性質のものでもなく、その批判は明らかに映画の作り手である側に向けられています。本作で扱っている事件一つひとつには、モデルとなった現実の事件があり、被害者や苦しみを抱えた人が存在しています。もし本作でこうした事件を単に物語的な要素として使い捨てたら、その批判の矛先は作り手に向かうことになります。そうした批判を受ける可能性を知りつつ、しかしその責任を引き受けて描き切ったところに本作の最大の意義があると思います。
明日は我が身かも
映画館は熟年男性陣が7、8割で多かったように思う。なんでかな?
ある報道の真実を追う側の自分と、リアルに不都合な真実に巻き込まれる自分と。
まさに自分の本質が試される非常に見応えのある話の展開。152分堪能しました。
この天秤で何を諦め、何を手に入れるのか。何を失い、何を背負わなければいけないのか。すごく、深く重い天秤。由宇子の正義感や潔癖さ、ジャーナリスト魂と、情と、それらがせめぎ合い葛藤している由宇子の内面。
私なら逃げ出したくなる。でも由宇子は逃げない。そこが強くて情もある。でも弱さでもあるのか?
演じている瀧内さんのリアルな立ち位置に自分を重ねました。
人生何が起こるかわかりません。何を諦め、何を手に入れるのか。自分の天秤はどうなのか。考えさせられました。
重すぎる天秤
正しさを貫くことは
きわめて静か、そしてきわめて深い(不快)
きわめて静か。
外で遊んでいる子供たちがガヤガヤするシーンはあるが、異本的には静か。人と人の会話がメイン。
この映画のすごいところは、"家族によって巻き起こる出来事を由宇子がどう扱うか" という選択に対して、観ているこちらは、由宇子の仕事ぶりを同時並行で観ているがために、「そうだよな。知れたら終わりだから、そう選択するよな。実際の行動としては妥当だよな」 と納得してしまうところだ。そう、由宇子と離れた所(対岸)から観て偉そうなコメントを言うということを、俺たち観客にさせない点だ。それは強烈な疑似体験だ。
観ているこちらがそう思ってしまう理由は、仕事としてドキュメンタリー監督をしている由宇子が、「事実を伝えたい」 という信念のもとに真剣に取り組んでいることが、全編を通じてこちらに実感として伝わってくるからだ。
私生活と仕事の両方を同時並行で観ることは、由宇子が仕事では真実を明らかにしようとする反面、私生活では正反対に隠蔽しようとするという事実を、スクリーンを通して疑似体験することに他ならない。その体験はもちろん気持ちよくないし、観た帰り道がずうんと重たくなる経験だ。それでも俺は、これからもこういう映画を観るだろう。この疑似体験こそが、映画の価値の一つだと思うから。
さて、真実を伝えようとする由宇子の姿勢は、もちろん好感として伝わってくる。制作を依頼しているTV局側は 「報道がふたりを追い込んだ」 といった表現はあっさり 「削って」 と言ってくる。そんな中であきらめずに自分が伝えたい真実を追い求める由宇子に感情移入していく。
そんな由宇子自身が直面した自分の家族の問題。これが周囲に伝わったら、せっかく晴れて放映される可能性が出てきた自分の作品も当然お蔵入りになってしまう。伝えたかったことも無に帰してしまう。いまの生活も、父の塾で学んでいる高校生たちの世話もすべて崩壊だ。すべてが崩壊する様子は、ドキュメンタリー監督をしているだけによくわかっている。由宇子の判断は当然だ。観ているこちらも感情移入しているから、由宇子とほぼ一致した思いになる。
そして訪れる、言い知れぬ衝撃の展開。そのシーンのカメラは、手持ち。微妙に揺れる画面が、由宇子の、そして俺たちの心の動揺を表して怖いくらいだ。
以下は、由宇子のセリフ。観終わってから読み直すと、なんと痛切なのだろうか。
「それじゃあ、嘘を真実だと垂れ流すやつらと一緒だよ」
繰り返しになるが、観なければいけない映画だと自分は思う。しかしこの152分は、この上なく、長く重い。
凡庸なマスコミ批判。歪曲報道体質など百も承知だ。
#82 本当の真実とは何か
を考えさせられる作品。
真実を追求するドキュメンタリーディレクターが、保身のために事実を闇に葬ろうとする様が無限地獄的に描かれていて、最後に至るまで興味深く楽しめた。
私たちがマスコミを通してみている真実が本当に事実なのか、呉本作を観ているとわからなくなる。
そしてメイが抱える真実も、本当なのかどうなのか?
ほとんど有名な俳優さんが出ていないせいか、ドキュメンタリータッチで描かれているところも◎。
瀧内公美さん、やっぱり映画のほうが良い!
何が正しいのか...
だいたいが、由宇子に感情移入しながら観ていたけど、
途中から辛かった…。
このネット社会による情報過多の
真実を曲げてしまう悪作用が恐ろしい。
この社会の未来は、本当に幸せなのか?!
とにかく、自分は深みにはまりたくないと思う。
ドキュメンタリー監督にもなりたくないし、
渦中に巻き込まれたくもない。
円の外で平和に過ごしたい。
などなど、
いろんなことを考えるのだけど、
自分ならどうするの答えが見つからない。
何が真実なのか、何が正しいのか…。
演出も脚本も、
監督の一本筋が通った作品に対する思いが伝わり、
最近、映画を観終わって、あまり感じたことのない気分になった
非常に深くて濃くて余韻が半端なく残る作品でした。
そして、お父さんに、ひとつ物申す。
「おっさん、何しとんねん!!」
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