「天秤は自分に都合よく揺れる。」由宇子の天秤 はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
天秤は自分に都合よく揺れる。
信頼していた人が実は嘘つきで、いい加減そうな人が実は誠実だったりする。善と悪。真実と虚偽。一見全く反することもあっと言う間に入れ替わったりもする。
時には圧力と闘いながら自らの信念を貫きドキュメンタリー監督としてある事件の取材を進める由宇子。そして夜は父親の経営する塾を講師として手伝う忙しい日々。そんな中最近入塾して来た生徒が妊娠していることを知る。更に次々と明らかになる嘘。自分が今まで選びとってきたものは一体何だったのか。由宇子の天秤が激しく揺れ始める。
真実を追及し虚構に立ち向かって来たはずの自分が身内の失態を隠蔽しようと画策している。なんて身勝手で滑稽なのか。そしてなんて人間臭いのか。ジャーナリストとて人間だ。所詮自分が一番かわいい。嫌と言うほど。
ラストシーンは震えました。物事の本質を見極め、語られる言葉を記録するために由宇子が回してきたカメラ。最後にそのレンズを向けられるのは誰か。常に冷静ながらも内なる動揺を演じきった瀧内公美さん素晴らしかったです。
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