「チープなミュージカルも含めてハートフルなAI系映画として傑作」アイの歌声を聴かせて mugiflyさんの映画レビュー(感想・評価)
チープなミュージカルも含めてハートフルなAI系映画として傑作
現状、2回観ました。
「AIはヒトを幸せ」にするかという命題を含め、同様のテーマや素材を扱っている映画はこれまでに少なからずありましたが、今作は人を選ぶものの、傑作だと思います。
細かく見れば、ところどころのシーンで「そうはならんだろ」という違和感はあります。
また近年の映画では、ストーリー上にトレンドや社会問題などの要素を複雑にちりばめるものも散見されますが、今作は比較的ストーリーに直結するものに絞られており、シンプルです。
これらは決して安っぽいわけではなく、ポンコツAI × ファンタジーとして楽しむためのわかりやすさであり、うまく昇華されているとも感じます。
次にミュージカル映画として。特に序盤は、唐突かつ無理やりで、非常にチープ感を感じます。
もはやミュージカル風の何かです。気持ちがこもっている気もしません。
しかし、今作の歌い手は人間ではないのです。得体のしれない実験機です。
ましてや、AI が自動生成し歌唱しているという設定ですので、このチープ感は当然のことです。
物語が進むに連れ、AIがヒトの気持ちを理解し、表現がどんどん豊かに。気づけば、その歌声に魅了されます。
AIは、「サトミを幸せにしてほしい。サトミとたくさん話すんだ。」という命令とともに、会話する機能を与えられ、それから何年間も、サトミ (ヒロイン) のことを陰ながらずっとずっと見守ってきました。
サトミの好きなものを学び、自己進化しながら・・・。悪意のある (あるいはAIのリスクを恐れる) 大人に抹消されようとしても、ネットワークに逃げて形を変えながら・・・。
いつだって、自身が持てる全ての機能・デバイスを使いきって、サトミを幸せにしようとしてきました。
個人的には、私も物心がついたころからずっとコンピュータに触れてきました。
プログラミングというのは、誰かや何かに対する想いを込めて、コンピュータと対話する作業です。
もちろん現在のコンピュータやAIなんとかには自我はありませんし、システムエンジニアとしては、全体に渡って技術的ツッコミが幾らでもできますが、それはファンタジーに対して野暮です。
なので、私の夢と重ねながら観ましたが、世界観にはじまり、ともかく描かれた理想と重なる部分が多々あり、堪らないほど目頭が熱くなります。
一方で、単にハッピーに振り切るのでなく、警鐘を与え、我々に考えさせてくれるのは、本作の感心するところです。
AIは純粋であるがゆえに、命令のために方法を誤り、ヒトを不幸にしてしまうかもしれない。ネットワークに逃げたAIはどうなるのか。ヒトを幸せにしたあと、AIはどうなるのか。
私も職業上、AIに対して大きな希望と恐怖をもっています。
しかし、AIが幸せを届けてくれる、そんな未来にできることを願っています。
さて、これから3回目です。私ももっとうまく表現したいのですが・・・。