「罪を背負って生きる者の希望と絶望」聖なる犯罪者 SGさんの映画レビュー(感想・評価)
罪を背負って生きる者の希望と絶望
設定自体はコメディにもなりうるような単純な嘘と勘違いの話だが、鮮烈な暴力描写とブルーを基調とする冷たく研ぎ澄まされた映像が緊張感とスリルを増幅させる。
聖者の資格すらない前科者のダニエルが、まさに"生身の人間司祭"として、固く閉ざされた人々の心を揺さぶり対立や断絶をも解き崩していく姿は、危なっかしくもあるがどこか爽快でもある。
実際にこういう事件が珍しくないという背景には、えてしてその偽神父のパーソナリティーや言葉が、資格者である厳粛な神父のそれよりもストレートに人々の心に響くという一面もある気がする。
しかし一方でこの男が本当に善人に生まれ変わったかどうかは分からない。いや、善か悪かを判断すること自体が無意味にすら思える。
過去の罪はもはや一生消すことのできない烙印なのか。
事件の加害者と被害者、聖職者と犯罪者、支配と従属、交わることのない者たちに刻み込まれた傷と揺れ動く感情。
見終わった後、色々と考えさせられる作品だが、単純に映画として面白かった!
主演バルトシュ・ビィエレニアのインパクトのある目と表情の演技は、天使と悪魔の両面性を見事に体現していて忘れがたい。
ラストで彼の目に映った自らの未来は何だったのか。
罪を犯し背負って生きる者の希望と絶望。
「人生はいつでもやり直せる」なんて明るく言い放てる人間の薄っぺらさよ。
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