「オッペンハイマーに勝てっこない戦時の実力差」映画 太陽の子 LittleTitanさんの映画レビュー(感想・評価)
オッペンハイマーに勝てっこない戦時の実力差
誤解を解きたいのが、原爆の開発競争は「科学」ではなく「技術」の闘いだった事。本作(2020)でも映画「オッペンハイマー」(2023)でも言及された通り、「原爆」に対する重要な大発見は核分裂が連鎖的に生じる事が分かった時点で終了。後は、ウランから核分裂しやすい成分(ウラン235)を抽出する等「技術」「工学」の問題。本作では、京大チームが抽出に必要な遠心分離機を頑張って開発し続けてもパワー不足のまま終わる。関東で理化学研究所も開発していたが、結局アメリカ・チームにボロ負けで試合終了。
対照的なのは、京大チームが学生が主力なの対し、オッペンハイマーのチームはプロの研究者(教授ぞろぞろ)が集まったドリームチームだった事。ニューメキシコ州に新たな研究施設を建てる等、金のかけ方も桁違い。ウランの入手に四苦八苦してる日本が勝てる筈もない。
アインシュタインの扱いも対照的。本作では、主人公(柳楽優弥)がアインシュタインと対話を繰り返し、あたかも核物理学のエキスパートのような扱い。一方、映画「オッペンハイマー」ではアインシュタインは過去の人。実際、アインシュタインの輝かしい功績は40代までで、マンハッタン計画の頃は晩年だし、そもそも核物理学は専門外。
アインシュタインが次世代の担い手として認めていたオッペンハイマーと、専門外のアインシュタインとすらイマジナリーしか対話できない核物理学者の卵とじゃ勝負にもならない事が明確になる映画。
コメントする