劇場公開日 2021年8月6日

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「敗戦直前の日本・・・戦争秘話」映画 太陽の子 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0敗戦直前の日本・・・戦争秘話

2022年6月22日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

2021年(日本・アメリカ合作)監督:脚本:黒崎博(大河:晴天を衝く、他)

プロデューサー:コウ・モリ。音楽:ニコ・マーリー(愛を読む人、などの)

太平洋戦争末期の日本(1944年から1945年)
原爆開発を背景に、時代に翻弄された若者たちの生き様を描いた映画です。
海軍からの依頼で京都帝国大学(現在の京都大学)で「原子核爆弾」の研究開発が行われていたのは史実に基づく事実です。
荒勝教授(國村隼)の指揮下、研究者の石村修(柳楽優弥)等は、
日本が起死回生の勝利を収めるための秘策はこれしかない・・・と、思い詰めていく。

荒勝文策は実在の高名な物理学者でイギリス留学時代には、アインシュタインの
薫陶を受けたそうだ。
映画で、アインシュタイン(声=ピーター・ストーメア)と対話するのは、若き日の
荒勝か他の物理学者だったのかもしれない。
アインシュタインの相対性理論が、原子爆弾に直接利用された訳ではないが、
結果として原子核分裂が核爆弾開発に応用されて、原子爆弾となりアメリカが実際に使用したことを彼は深く悔いて、日本人物理学者に直接そのことを手紙で伝えているとの事だ。

ラストでは当時の京都帝国大学の荒勝文索の写真。
遠心分離機や加速器など大掛かりな機器。
その上に登っている研究員の写真もあります。
そして20名ほどの研究員たちの記念撮影の写真。
明るく楽しげに見える研究員たち・・暗さは見られない。
(彼ら、特に学生は、この時、本当に原子爆弾の殺傷力を知っていたのだろうか?)

実際に、石村修たちが原子爆弾の威力を知ったのは
広島に原爆が投下された8日6日以降で、
8月10日に現地入りした荒勝たち事故調査員が、
「これは原子爆弾である」と結論づけ、はじめて「原子爆弾」と命名された。
その直後、修が「次の投下は京都」と世津(有村架純)と母・フミ(田中裕子)に
避難を勧めて、自分は比叡山で爆発の瞬間を観察する・・・と告げる。
フミは「なんと恐ろしいことを!・・・科学者は!」と、絶句し、
世津は、「ご近所の人はどうするの?」と困惑する。
実際に荒勝文策は「これは千載一遇のチャンス」と公言し、
比叡山に登って京都に投下される爆弾の、
原爆投下から爆発の瞬間の状況を徹底的に観測してやろうと述べたと言う。

この映画は日本で行われていた「原子核爆弾の研究開発」という、
ショックキングでセンシティブなテーマに果敢に挑戦した映画です。
(万一、世界に先駆けて日本で完成を遂げていたら?)
そう思うと空恐ろしくなりました。
しかし映画は青春群像劇の初々しい側面も多く見られ、
石村修(柳楽優弥)
弟の裕之(三浦春馬)
幼なじみの朝倉世津(有村架純)
3人の男女を超えた清々しい友情に溢れ、思わず戦時下の圧力を忘れるひと時でもあります。
柳楽、三浦、有村の好演。
美しすぎる海と空。
格調高く内省的にして場面にマッチングしたニコ・マーリーの音楽。
重く苦しいというより、未来への伝言を感じます。

日米合作のための利点も縛りもあったでしょう。

狂気に落ちる修を演じる柳楽優弥の確かな演技力。
戦争後に思いを馳せる強さを、美しく演じた有村架純。
石村兄弟の母親役の田中裕子という人間の底力。
そして何より、軍人として国の為に死んでゆく自分の遺書の中で、
「母上とお兄様のご多幸をお祈りします。さようなら」
まるで、私たちへの別れの挨拶のようです。
これが最後の出演作の上映となったこと。
三浦春馬さん、あなたがこの世からいなくなったこと、とても悲しいです。

過去鑑賞

琥珀糖
りかさんのコメント
2023年9月10日

実験風景も器具が稚拙で、私でもムリ❣️とわかり
肝心のウランも焼き物しているところでムリムリ手に入れてばら撒かれて‥‥、
メインが、原爆作りになっているので、訴える力の、弱いこと。
やはり、この時代、命をかけていた人々がたくさんおられ、散っていかれ、三浦春馬さんをもっと出すべきだった、と思います。
観たいから、だけではなく。

りか
りかさんのコメント
2023年9月10日

実は、私も、期待外れでした。
NHKで4回観て、期待の劇場版でしたが。
よくわかるのが、
↑の方が書いてられるように、終わりの方で、原爆ドームに修が行くところ、観光客もいて現在と思っていたら、修が学生服で歩いている。なんじゃコリャ、と思いました。いい加減すぎ

りか
caduceusさんのコメント
2023年4月4日

私のこの映画の評価はからいです。映像をアメリカでつくるのはいいですが、爆心地の描写など、かなりいいかげんです。原爆ドームのすぐ横には河が流れていますし、原爆投下直後、爆心地に行けるような電車もありません。
こういう映画は忠実につくってほしいものです。8月6日に観に行きましたが、ちょっと残念でした。

caduceus