劇場公開日 2020年11月20日

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「不安定さと危うさとちょっぴり希望」THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女 バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0不安定さと危うさとちょっぴり希望

2020年12月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

心情を映像化するのが上手い監督さんだなぁと感心しました。

離婚し別居してる父を頼りに行った食堂シーン。
ガラスに映る父と主人公のカット、ぜつみょー!
観ていただくとわかりますが、父は食堂の外でタバコを吸っているだけなんですが
ガラスに映ってる姿含め絶妙に「一つの絵」になっているんですね。
離れてる父の心まるわかり。
いやー、うまい、これうまい!(よくある手法なら、僕が不勉強です。。すみません)

それと、親友の彼氏との密輸準備シーンのなんとまぁ蒼いエロティックよ!
ただ、お腹に密輸商品を巻きあってるだけなんだけど、そこまで積み上げてきた
物語や、織り成し映し出してきた心情の結果至るこのシーンが、
色ーーーんな意味で危うい男女の関係性を映し出しています。
急いでいるだけの息づかいが、そうにも見えるような見えないような・・・。
うまいなぁって思いました。
とにかく全編に渡って映像で語ることがうまいです。

作品自体は主人公少女の家庭環境含め、また年齢的な面、人間関係の面で
不安定な心を埋めようともがいていく様を描いていますが、
考えすぎでしょうが、そのストーリーを使いながら
まさに今の政情に混乱する香港自体を映し出そうとしているのでは?
なーんて考えちゃいました。
あっちなのか?こっちなのか?どう進むべきか?
頼れるかつての親(英国)はもういないように思える・・・
自身達だけでいけるかなぁ?不安だなぁ・・・でみたいな。

深読みしすぎ?かな?

夜景はビクトリアピークじゃなくて、九龍ピークの方かなぁ?
主人公が母と夜景を見るときのセリフが、ズンと響きます。
本作品は、香港に生まれた「香港人」が自身のアイデンティティへの
静かで高らかな宣言なのではないでしょうか?

秀作です。

バリカタ