「「生まれてきてくれてありがとう」」ベイビー・ブローカー 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
「生まれてきてくれてありがとう」
是枝裕和。韓国映画を撮る。
2019年『真実』を外人キャストでしかも全編フランス語で、
日仏合作で撮り終えた是枝裕和監督。
『真実』独特の明るさと自由に溢れていた。
『ベイビー・ブローカー』は韓国人キャストで、韓国オールロケの純粋の
韓国映画です。
是枝裕和監督は映画に、国境も言葉の壁も全く関係ないことを証明した。
母国のように溶け込み自由自在に撮影する彼は真の国際人だ。
是枝監督の優しさや映画への情熱が言葉の壁を超えて伝わるのだろう。
「映画」は「音楽」や「美術」「写真」と同様に万国共通芸術かも知れない。
最高の韓国人キャストが集結して、
『ベイビー・ブローカー』に映る韓国は最高に美しい国だ。
撮影したホン・ギョンピョさんの映す韓国は、上下左右に幅広くて(つまり広角・・)
切り取るカットも実に垢抜けている。
ボロのワンボックスカーが走る海辺の一般道も、山間地帯も異常に美しい。
主人公たちは後半でソウル行きの列車に乗り換える。
高速列車がトンネルに吸い込まれる。
画面はトンネルの上の山並みをヘリコプターから付近一帯の美しい山の連なりを写す。
なんと肥沃な美しい山、森、木々だろう。
都会もクリーニング店も路地も皆、ストーリーを持ち話しかける。
(かつて無いほど韓国が魅力的に撮影されている)
何故だろう?
是枝裕和が分け隔てない心で韓国を韓国人を敬い、愛し、
見たそのまの韓国を映画に落とし込む。
俳優たちは力みも虚栄も捨ててありのままの自分で、
自由奔放に演じている。
(その環境を作る事が如何に大事かを知る映画でもあった)
そして『ベイビー・ブローカー』は最高に面白い。
ロードムービーで、赤ちゃんを斡旋する犯人側には
「ベイビー・ボックス」に乳児を捨てた母親も合流している。
そして彼らを尾行してるのは「ベビー斡旋の現行犯」で逮捕を目論む
警察の女性刑事2人。
見て行くうちに、ブローカーのソン・ガンホと共犯のカン・ドンウォンが
犯罪者なのか?、そうでないのか?
観客の私には、分からなくなって行く。
彼らは正しい行為を行なっているのではないか?
赤ちゃんにとって一番良い《生きる環境の選択》を探して
いるのではないのか?
そう思えてくる。
捨てた母親は劣悪な環境に育ち、しかも大変な罪を犯している。
見てると、まず最初に赤ん坊を保護したらどうなのか?
そう思うし、
殺人犯はまず身柄の拘束だろう!
そう思う。
女性刑事は頑なに「ベビー斡旋の現行犯逮捕」に拘る。
ロードムービーは観光旅行を兼ねて「観覧車」に乗ったり、
射的をしたり、ソン・ガンホは離婚して離れ離れになってる娘に
面会したりもする。
そして何組も顔合わせする《養子縁組》はことごとく母親が
《難癖》が付けて、ぶち壊したりが面白いし可笑しい。
捨てられた赤ん坊にとって、一番良い選択とは何なのだろう?
その回答を探して、
ブローカーも警察もそして観客も右往左往して、
そして真剣に考えることになる。
そういう映画。
この子にとって、一番の幸せとは何か?
それを探し続ける映画。
安易に答えは示さない。
けれど観客は、
ウソンちゃん(赤ん坊)が、たくさんの
『生まれてきてくれて、ありがとう』
を浴びて大きくなることだろうと、
確信する。
軒先なんてとんでもない。琥珀糖さんは、とてもきめ細かくて素敵なレビューをお書きです。
ベイビー・ブローカーは皆が右往左往、でもそのほとんどが温かい眼差しをしていたようです。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。
「ソン・ガンホとカン・ドンウォンが犯罪者なのかそうでないのか分からなくなっていく」っていうのは私も同じような気持ちで見ていました。
「この子にとって一番の幸せとは何か、それを探し続ける映画」
本当にその通りですね😭
琥珀糖さんのレビューを読んで、またじっくりこの映画を見てみたいと思いました。
「朝が来た」や「十七歳の瞳に映る世界」など類似の作品が多いですね。どちらもレビューをあげてたのですが削除されてしまいました(笑)。
いま上映中の「あのこと」はかなりの傑作です。もし機会あれば劇場でどうぞ。
コメントは大歓迎です。気軽に声かけてくれれば嬉しいです。
ここは映画好きが集まる場所。人によっては評価が別れて、あーでもない、こうでもないと語り合えれば良いのではないでしょうか。
ついつい奇をてらったレビューを上げがちな私はそれを見抜かれているのか、なかなか共感を得られません。素直に書いてる部分もあるのですが、ここでの交流は自分を見つめ直す上で有効なものだと思ってます。
今後も忌憚ない意見をくださればありがたいです。よろしくお願いします。