「「赤ちゃん不法売買」珍道中。」ベイビー・ブローカー ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)
「赤ちゃん不法売買」珍道中。
赤ん坊をベイビーボックスに「捨てた」ことから始まる奇妙な心温まる物語。当事者たちが、話の進展とともにどんどん心境が変化していくのが面白い。ブローカー達はお金を稼ぐために赤ん坊をより高く売りたかっただけ、母親は育てられなくなったから手放したかっただけ。そして刑事達は犯罪を憎み犯人を捕まえたかっただけ。しかし最後は、こどもが幸せになることを全員が願うような展開になる。こどもの存在は偉大であり、人々の強い希望となる事を改めて教えてくれたかのようだ。理屈を述べ立てるのではなく、些細なシーンの積み重ねによって登場人物の心境の変化を観る者に納得させるのは、相変わらずの是枝監督の手腕である。何でもないようなシーンでも、内面の繊細な心情が感じられる余韻のあるシーンになっている。
一人一人の状況や育った背景なども丁寧に描かれ、好感が持てる。外見は「人身売買」の犯罪者集団とそれを追う刑事という形だが、ほのぼのとした人間ドラマにもなっている。それには、人間くささいっぱいの存在感があるソン・ガンホの演技が大いに貢献していると思われる。つかみどころがないようでいて、人を包み込む暖かさはこの作品に合っている。深刻なテーマを孕んでいるが、楽しく見る事ができる奥深い作品になりました。
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