「疑似家族と自己肯定」ベイビー・ブローカー kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
疑似家族と自己肯定
是枝監督は様々な形の家族の姿を描く映画をつくる印象がある。そしてどの作品にも、家族には血縁よりも大事なことがあるというテーマが横たわっている気がする。
本作もそう。教会の赤ちゃんポスト(ベイビーボックス)に捨てられた赤ちゃんを転売するブローカーたちと、赤ちゃんを捨てた母親、そして親に捨てられた男の子が共同生活を営むうちに疑似家族のような関係性になっていく様が描かれる。従来の是枝作品と違うのはロードムービーであるところ。赤ちゃんの養父母を探す旅の中で4人(赤ちゃん入れて5人か)が本当の家族のような関係になっていくのがいい。
全体の通して観ると家族の話ではあるが、本質的には自己肯定の話のように思えた。母親に捨てられた自分、子どもを捨てる自分、妻と子どもから距離を置かれる自分。そうした自分を否定するのではなく、生まれてきて今生きていることが素晴らしいんだと優しく教えてくれる感じ。その象徴的なソヨンとヘジンの言葉でやはり泣かされてしまった。
いや、それどういうこと?って意味がわかりづらいところがあるし、展開がちょっと遅かったりする。完璧とは言えない出来だと思う。でも、十分魅力のある映画だった。
ちなみに韓国映画でよくある食事シーンは少なめ。ここらへんが日本人である是枝裕和監督が作った韓国を舞台にした映画という感じがして興味深い。あくまで韓国映画ではなく是枝映画だった。
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