「胸の内」ベイビー・ブローカー U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
胸の内
複雑な脚本というか、表に出てくる事柄とは全く違う筋がもう一層あるような脚本だった。
センセーショナルな題材ではある。
韓国風にもっとドス黒い作品にも出来たはずではあるのだが、人の暖かさを感じてしまうような作品になってた。詰まる所…焦点がボヤけるというか、んー…まぁ、そんなに単純な話なんて映画の中にしか転がってないんだろうな、とも思う。
「赤ん坊」に対する視点が、皆んなバラバラで、それを扱う理由も様々なのだけど、そんな連中が「赤ん坊」を介して擬似的に家族になっていく展開は面白くもあり、同時に切なくもある。
それだけ無垢な存在なのだろうと思う。
ただ、まあ、そんな無垢な存在を純粋に金儲けに使ってる連中もいなくはない。
男2人も、結局は金を手にする手段として、養子縁組を利用してはいる。
公にしたくない理由を持つ買い手もいるのは確かなのだろう。足の付かない商品を欲する理由もあるのだろう。彼らがキューピッドと自分達の事を表現するのは、言い訳にしか聞こえないけれど。
矛盾を大いに孕む作品だった。
それが人間なのだと言えばそれまで。
日本人の監督が、わざわざ韓国でコレを撮ったのも頷ける。日本ではこの脚本を昇華しきれないと思う。
韓国でなければ、韓国の俳優達でなければ、このとてつもなく曖昧な人間模様にたどり着けはしなかったろうなと思う。
なんちゅうか…居心地の悪いぬるま湯にずっと浸かってるような印象だった。
あまり、起伏はなく、何と対峙してるのかも、今は分からない。そんな感じ。
■追記
特殊、なのだよ。
万引き家族の時もそうだったけど、舞台設定がぶっ飛んでて比較対象が見当たらない。
そのくせ、そこに生きる人間達の言動には、いちいち共鳴してしまう。不思議な体験なのだ。
今回もそうだ。だからこそ混乱する。だからこそ集約される。人の葛藤が浮き彫りにされていくとでも言うのだろうか…。後ひくわー。