劇場公開日 2022年6月24日

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「社会的弱者が支え合う単位としての疑似家族と、見上げ追いつこうとするアウトサイダーの視点」ベイビー・ブローカー 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5社会的弱者が支え合う単位としての疑似家族と、見上げ追いつこうとするアウトサイダーの視点

2022年6月28日
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鑑賞方法:試写会

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そのフィルモグラフィでほぼ一貫して“家族”を描いてきた是枝裕和監督が、前々作の「万引き家族」に続き、分かりやすい疑似家族を題材に選んだ。ソン・ガンホが演じる借金苦のクリーニング店主サンヒョンは、児童養護施設出身で赤ちゃんポストのある施設で働く青年ドンスと手を組み、ポストに置き残された乳児を裏ルートで養子を求める親に販売して稼いできた。ところが若い母親ソヨンが一度ポストに預けた子を取り返そうと戻ったことから、大人3人と乳児、途中から養護施設の少年も加わって奇妙な5人組の“赤ちゃんを売るドライブ旅行”が展開する。彼らは格差社会の底辺近くにいる弱者であり、苦しさゆえに赤子をお金に換える目的のために行動を共にするという悲哀に満ちた旅でありながら、自然と彼らの間に絆が生まれてくるのは「万引き家族」に通じる要素だ。

そして、彼らを尾行する女性刑事2人組という外部者の視点を配し、ロードムービー形式にしたのは、是枝監督が韓国のスタッフとキャストで製作した韓国映画であることと無関係ではないだろう。外国を訪れて異邦人の立場になったとき、その国を旅して巡りたいというのは自然な欲求だ。見たことのない景色を見たいというのももちろんあるが、移動することで現地の人々と出会い、交流し、その暮らしぶりに触れることもまた旅の醍醐味と言える。是枝監督もまた、キャラクターたちの道中に伴走するような心持ちで脚本を書いていったのではないか。

社会的なランクで言えば明らかに上にいるはずの刑事2人が乗用車の低い座席から尾行を続け、5人組がワゴン車に乗っている時やホテルの部屋にいるときなど、常に彼らを見上げる位置関係に配したのも巧い。当初こそ乳児売買という不正を憎み犯行現場を取り押さえようと意気込むが、5人組の奇妙な絆に軽く嫉妬し、やがて羨望に変わり、彼らの心の内に近づきたいとさえ願う。常に社会的弱者に寄り添う是枝監督の視点を、疑似家族を見上げる刑事2人の構図が象徴している。

高森 郁哉
ノブさんさんのコメント
2022年7月5日

宣伝パンフに「万引き家族Xパラサイト」とあるが、まさに言い得て妙。 万引き家族の韓国バージョンとして、楽しめる。 ラストの展開は予想外で、これ故に万引き家族を超越したと言えるかも。

ノブさん
はまちゃんさんのコメント
2022年6月29日

楽しめました。

はまちゃん