劇場公開日 2022年6月24日

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「「万引き家族」に並び、深淵な響きを放つ秀作」ベイビー・ブローカー 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「万引き家族」に並び、深淵な響きを放つ秀作

2022年6月26日
PCから投稿

映画を始めとするフィクションの面白いところは、例えばブローカーという違法な存在から家族のあり方を問える点だ。近年、海外製作を通じて国境に囚われない「家族の情景」を映し出そうとしているかのような是枝監督。本作は急な坂道や階段を登り尽くした先から物語が始まる。そこで我が子を手放す若き母親。セリフはなくとも、歩んだ道のりが重い胸のうちを覗かせる。ただし、ここからシリアスに振り切れるのかと思いきや、本作はソン・ガンホらが醸し出す絶妙なニュアンスで多様な味付けを加味。彼らを廃車寸前のワゴンに同乗させ、束の間の擬似家族の温もりを織り成していく。ふと目に飛び込むのは「傘」。私たちは誰かの傘になり得ているだろうか。はたまた、社会は、世の中は、人々の苦しみや悲しみの傘たりえているだろうか。絶え間なく注ぐ陽光、染み付いたものを洗い落とす水しぶき、それからふと聞こえてくる音楽が、人間ドラマに忘れえぬ陰影を刻む。

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牛津厚信