「「赤ちゃんを売買する人」というタイトルは衝撃的でも、そこには地に足のついた深い人間模様があった」ベイビー・ブローカー 山田晶子さんの映画レビュー(感想・評価)
「赤ちゃんを売買する人」というタイトルは衝撃的でも、そこには地に足のついた深い人間模様があった
「万引き家族」の是枝裕和監督がオリジナル脚本で手がけた韓国映画。是枝監督は、韓国での撮影は日本とあまり変わらなかったと述べているように、言語は違っても邦画の香りが残る作品となっている。
本作は「パラサイト 半地下の家族」のソン・ガンホ主演。クリーニング店を営んでいるからか、上着やシャツなど着ているものに清潔感があったところに、過去作の多くの役柄のイメージから、いい意味でギャップがあった。
ただ、他では期待通りで、借金に追われている「どこか憎めないオジサン」であり、営むクリーニン店も今では珍しいくらい古い。足踏みミシンを難なく使いこなす姿、ボロ車の修理をしないまま堂々と乗り続ける風格は、ソン・ガンホならでは。
この先がどうなってしまうのかワクワクする展開となる。
映画は、ストーリーが重くなりがちな「赤ちゃんポスト」から始まるが、優しいロードムービーのように仕上がっており、その流れの中で、生きることと育てること、多様な存在価値の本質を前向きに提示している。
韓国映画特有のグロさや決定的な結論が緩和されているあたりは客層の意見が分かれる作品なのかもしれない。
ただ、子供の自然な姿を映し出す是枝監督の技法は満点!
2009年に是枝監督の「空気人形」で主演したペ・ドゥナは、相変わらず華奢で口数が少ないにも関わらず、表情や身振りで重要な役柄を演じているのでそのあたりも見所。
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