「イギリスの〝いい話〟を仕立てる底力」ノッティングヒルの洋菓子店 グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)
イギリスの〝いい話〟を仕立てる底力
いつ自分が当事者になるかもしれない。
そう思わせるちょっとした出来事やちょっとした気持ちのすれ違いをごく自然に物語に織り込んできて、なんだか〝いい話〟に仕上げてしまう。
こういうイギリスの映画作りは本当に上手ですね。
期待を裏切られることがありません。
勿論、家族や親しい人の喪失は決して〝ちょっとしたこと〟ではありません。ただ、世の中全体の中で起こり得ることとしては大きな事件や事故ではない、という意味です。
自分らしさ
自分探し
自分のやりたいこと
そういった言葉が、なんだか強迫観念みたいになって立ち止まってしまう人がいるかもしれませんが、
サラを偲び、その思いを遂げたい。
それだけで十分に充実感や達成感を持てるし、なかなかにいい人生を送ってると誇れると思います。
どんな仕事であっても、映画の世界ほどオシャレだったり、スマートではなくても、仕事と呼ばれるものは必ずどこかで誰かの役に立ってるわけなので(分かりやすいところではインフラ関連工事や物流に関わる仕事は不特定多数の人に恩恵をもたらしています)、そのことへの想像力があれば、自分の人生もそう悪くはないかもな、と思えるはずです。
イギリスの場合、ケン•ローチ監督が描くような労働者階級の報われなさ、という厳然たる社会問題があるので(日本でもかなり表面化してますが)、このような映画が「経済的に余裕のある人たちの世界の話であって、自分たちには縁がない」みたいになっていないことを、願うばかりです。
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