配信開始日 2020年9月4日

「浸かったら抜け出せなくなるカウフマン世界が全開」もう終わりにしよう。 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0浸かったら抜け出せなくなるカウフマン世界が全開

2022年6月28日
PCから投稿

吹雪が窓に吹き付け、車を進ませる男女の未来は一寸先すら見通せぬほど暗闇に包まれている。彼女の側は「終わりにしよう」と口にできず、その気配を彼氏側も切に感じつつ、打つ手がない。間を埋めるように続くセリフの応酬はそんな”宙ぶらりん状態”の投影だが、しかしそれにしても全く線形には進まない会話劇の織り成し方は実に見事だ。これに加えてのコレット&シューリスの奇行、そして振り子のようにスキップや巻き戻しを繰り返す時の流れなど、もう本当に訳がわからない。その混沌と混乱がまたカウフマンらしさであり、いちど沼に浸かったら最後、我々はミステリアスな心地よさから抜け出すことができなくなる。そもそもこの物語の語り手は彼なのか、彼女なのか。全てを白日の下にさらす術もあるのかもしれないが、そうなるとカウフマンはカウフマンでなくなる。謎は謎のままで召し上がれ。今はうす暗闇の一夜とその余韻をじっくり噛みしめていたいのだ。

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牛津厚信