「縦と横の空間」空に住む 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
縦と横の空間
高層マンションの上階に住む主人公が、平屋の古民家を改築した小さい出版社に勤めている。縦に伸びる寒々しいマンションの非人間的な空間と、面で広がる古民家の出版社のアットホーム感。普通の人なた落ち着ける空間のはずの自宅が、この映画の主人公にとっては他者が入り込んでくる、落ち着かない空間なのが面白い。おばさんが突然訪ねてきたり、合鍵を持っていたり、ちょっと怖い。猫がストレスが原因の病気にかかるが、あの家は怖い。空中に浮いているような感覚の高層マンションの浮遊感も逃げ場のない怖さを際立たせる。
このマンションの部屋には両親の位牌がある。窓の景色をたのしませてやりたいと窓際に位牌が置かれている。何もない空間に何かが見えない得体の知れない何かが漂っている感じが冒頭から示されている。
高層マンションの地下のゴミ捨て場のシーンが何回が出てくるのも良い。華やかなマンションの地下の空間には華やかさはない。きらびやかな生活の残滓が捨ててあるだけ。そこで掃除している
猫を荼毘に付す主人公が煙がでないことを残念がっていた。煙となって愛猫が漂えばいいということだろうか。なぜかはわからないが、たしかにそれは素敵なことだと感じた。
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