「また、歩み出すパワーをもらえる映画」空に住む 花散里さんの映画レビュー(感想・評価)
また、歩み出すパワーをもらえる映画
大都会を見下ろすタワーマンションの高層階が舞台…もう、それだけでフワフワわくわくした。
両親を亡くして叔父夫婦が所有するタワマンに引っ越した主人公・直実。
多部未華子さんの魅力がいっぱいだった。
直実が勤めてる出版社が郊外の古民家で座卓で編集。
タワマンとの高低バランスの取り方が面白い。
地に足をつけて働け、という暗示にも思える。
高層階という空に近い不思議な空間でスター俳優に出会い惹かれていくという非日常のドキドキ感!
しかも単なるラブストーリーでないところがいい。
2人は単純ではなくて…とても分かりにくいし、ややこしい人物たち。
多部未華子さん演じる直実と岩田剛典さん演じる時戸の対峙は哲学的にも感じて好きなシーン。
でも集中して2人の言葉を聞いても…直実がどんな人か?時戸がどんな人か?よく分からないという不完全燃焼感を残された。
また観に行ってしまうかもしれない。
青山真治監督はそれを狙ってるのかな。
スター俳優・時戸森則を演じる岩ちゃんが良い。
チャラいのかと思いきや哲学的なことを次から次へと口にする。
それでいて気まぐれ…まるで気位の高い猫みたいに。
岩田剛典さんの魅力と知性が垣間見えるシーンが多かった。
周りを彩る豪華な助演陣。
柄本明さんやら大森南朋さんやら永瀬正敏さんやら…映ってる時間は短いけど濃い存在感を残してる。
特に岸井ゆきのさん・美村里江さんが演じる女性たちが興味深かった。
一緒に観た友達と女性の生き方について語り合ってしまった。
女性映画としての見どころもあるかもしれない。
悲しくても泣けない経験が自分にもある。
泣かずに1人で頑張ってる時もある。
本当は泣けたら楽になれるのかもしれない。
でも、悲しみや切なさを心に抱えて次に進むパワーを蓄えているんだよね。
エンドロールに流れる主題歌、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEの〝空に住む Living in your sky〟が黒猫ハルの言葉のようで心に沁みた。
孤独や喪失感を乗り越えて、また歩み出すパワーをもらえる映画。
青山監督登壇付き試写会で監督。
お話を聴けたから作品の面白さが伝わりました。ありがとう。