ギレルモ・デル・トロのピノッキオのレビュー・感想・評価
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枯木になるかと思うくらい泣いた
色んなサブスクを出たり入ったりしてたが、長いことNetflixとは縁がなかった。なんか、あんまり刺さるネタがなかったのだ。著名作は他でも見れるヤツばかりだし、オリジナルコンテンツも微妙に僕のツボじゃないなぁ...(観ないで偉そうに言う事じゃないけど)そんな感じで「よく分かんないけどチヤホヤされてるとこ」ぐらいの距離感だった。
YouTubeから、最近海外の映画・アニメレビュアーを良くおすすめされるようになった。言葉は分からないけど、意外と言いたいことが何となく伝わるので面白く、寝る前とかによく見るようになった。(コメント欄は翻訳できるしね)
段々、ある時期に『ピノキオ』の映画を比較レビューしてる動画が幾つもあることに気づいた。ディズニーの実写版は一回痛い目を見たのだが、比べられてるもう一本はよく知らないやつだ。え、デルトロ...?パンズ・ラビリンスの人にピノキオ撮らせちゃったの!!?
気づいてたらネトフリ入会したのがこれ打ってるほんの2時間前です。
正直「ピノッキオの冒険」って何十年も擦られてる題材だし、流石によく知ってるお話だ。これから初めて見る年頃の子供ならともかく、こんな年長向けに作ったって、もうしゃぶり尽くされてるんじゃない?というのが観る前の構え方だ。それでも観たくなったのは、動画で見かけたブルーフェアリー(でいいの?)のデザインが驚天動地にカッコよかったからだ。ビジュアル的にフレッシュなものが見れたら儲けもん、それぐらいの温度で観始めた。
果たして観終わって、僕は自分で引くくらい泣き腫らしていた。声を上げてへの字口で泣いてた。何年ぶりだこんなの...。デルトロやべぇ...何でも撮れるじゃん...。
まず期待通り、ビジュアル面は唸らせる拘りようだ。ピノッキオからして間近で見ると見慣れないうちはちょっと怖い、でも遠くから見るとウーパールーパー的なあどけなさ。そして当然無邪気で善良だから、後半には見る側もすっかり気を許してる。良いバランス!しかも胸に「良心」の居住スペースが物理的にある。なんだよコイツら、可愛いじゃん...。
加えて見せ方を間違えたら退屈になりかねない普通の人間キャラクターたちも味わい深いデフォルメ具合。キツネと人形芝居小屋のオヤジをミックスしたヴォルペ伯爵は露骨な位分かりやすいし、市長親子にしたってひと目で「あ、それぞれこういう性格なんだろうな」って刷り込まれる出で立ち。
ブルーフェアリーに該当する精霊たちの魅力は言わずもがな...見ただけで「うわ、超常的な地位の存在じゃん」と判断させられるし、正直「ピノッキオの登場人物」としてはギリギリのラインだと思う。もうちょっとリアルな顔つきにすればフロムゲー出れるもんあいつら。でもその異物感が立場の説明になってるから...うーんセーフ!
でさぁ、内面的なキャラ造形も抜かりないの!!
(こっからネタバレゾーン)
冒頭のゼペット爺さんのくだりから「ああ、この後...」とハラハラしながら見守る羽目になる。いちばん有名な旧ディズニー版だって「子供がいたらいいなぁ」ぐらいの深みで止まってたのに、その「いいなぁ」の背景をハイレゾにして見せられる。即ち、生きてた頃の息子との日々。エグいて。お話作りの手段としては鉄板だけどやっぱりエグいて。
で、これを一枚噛ませた事で、その後のゼペット爺さんのキャラクターとしての厚みと重要性が見違えるほど跳ね上がる。
息子を失ってからの喪失感と廃人ぶり。
酒の力も相まって「新たな息子」を彫った時の狂気性と慟哭。
生きた人形を産んでしまった異常事態へのパニックと畏れ。
新たな家族を得た喜びと愛情の帰還。
息子を奪った戦争への感情と、現実として戦時真っ只中である世間との乖離。
そしてある事(後述・超ネタバレ)への激しい自戒。
箇条書きでこの情報量、しかもどれも話の筋道的に横道に逸れてない。見応えがおかしい。ディズニー版評として「旧版はジミニーこそ第二の主人公でバディ物」ということを前に書いたけど、本作の第二の主人公はゼペット爺さんに譲る。勿論コオロギのセバスチャン・J・クリケット氏は「良心・相談役」そして「話の進行役」として存在感を発揮し続ける...不必要に不幸体質ではあるけど。
で、本来の主人公であるピノッキオの特別感が凄い。
純真で正しいキャラクターというのは何となく退屈そうで、フィクション擦ってる人ほど忌避しがち、もしくはその欺瞞性を暴く流れに持っていきがちなんだが、
例えばアンパンマン然り、スーパーマンのクラーク・ケント然り、ピュアも突き詰めると強烈に磨きあげられた鏡のような輝きを放つ。鉄腕アトムなんかもっと近いか。そして誰かのヒーローになる。
生まれたてのピノッキオ、無菌状態ゆえに世の中の仕組みと足並みが全く合わない。この危なっかしさをオブラートなしでしつこく念入りに描くのは、多分造り手側も神経すり減ると思う。でも、そこまでやってくれるから成長が引き立つ。ただ「そういう設定です」じゃウザキャラになっちゃうからね、プロの作品でもそういうキャラいがちなのでハラハラしたけど、彼はすごい領域にまで進化する。
少しずつゼペット爺さんやセバスチャンから受け取った言葉をスポンジのように吸収し、そして幸福にも善良な落とし所で反芻・理解したピノッキオは、やがてその言葉を用いることで、自身に悪意を抱いていた一部キャラクターたちにも変化を与えていく。サーカスの人形芝居では不当に認められない今に嫌気がさしている白ザルの理解者に、軍事訓練校では熱烈なファシストの父に応えようと自身の捌け口がない息子の友達になる。
『寂しい者への喜びとなるように』として精霊に生を授かったピノッキオだが、それは父であるゼペット爺さんに限らず、行く先々の「寂しい者」の目に灯りをともしていくのだ。こんなんあれですやん...キリストですやん...!実際教会出てくるし、意図的なのかも。
その後、ご存知海の怪物(←なんかディテールキモい!)の腹でゼペット爺さんと再会するピノッキオ(と味方になった白ザル)。
(こっから終盤ネタバレゾーン)
鼻を伸ばし潮穴までの橋にして脱出しようという流れに。
窮地を脱するためにワザと嘘をつく展開は新ディズニー版でもあったんだけど、こっちは嘘(=本心と真逆の事)の内容が全部涙腺に来る...!!「(笑顔で)パパ、嫌い!セバスチャンも大嫌い!(鼻ニョキニョキ)」う、うわぁぁぁぁ!!!ここに来るまでケンカや仲違いもいっぱいあっただけにうわぁぁぁ!!!!😭
こっからもう、畳み掛けるように二重三重に尊い...。
ピノッキオは木の人形という生き物であって生き物でない微妙な存在なので、人生に制限がない。轢かれても撃たれても、何度も冥界にある砂時計を回して蘇るという下りがあったのだが、海に沈み溺れるゼペット爺さんをすぐ救けに戻るために砂時計の待ち時間を破棄し、その永遠の命を棄てる。
ゼペット爺さんは物言わなくなった木の人形を抱き締め、ピノッキオをピノッキオでなく、死んだ息子の代わりのように育てようとしていた自分を振り返り激しく自戒し涙を流す。戻ってきてくれと繰り返し訴える。
それでラストは...やっぱここでは言わない。とにかく文句マジで無し。もう、最後の最後の最後まで餡たっぷり、しかも上品なお味でした。
という訳でもう...古典的お題目である筈の『ピノッキオの冒険』に、全力で押し潰される最後のマヨネーズ容器のごとく涙を絞り尽くされた(←エンディングの歌詞まで泣かせてくる)僕は、デルトロとネトフリに舐めてましたスンマセンと深く、深くお辞儀するのであった。
ていうか...まだこれしか観てないけど、もしかしてNetflixってこのレベルの金塊ザクザク埋まってたりする...??だとしたら「(ファミリー映画のCM風に)ネトフリ、サイコー!!」とまで言えちゃうんですけど。ねぇ?どうなん?
素晴らしい
この一言しかない。
細部にまでこだわったセット、どれも止めてずっと見ていたくなる。
この作品に携われたスタッフは誇らしいだろうな、と。
ストップモーションならではの動きも最高だった。
愛息子を亡くして悲しむゼペットじいさん。
あれ?なぜか最初から結構なお爺さんなんだよね。
遅くに出来た子なのか?
その哀しみたるや、想像に容易い。
生まれた?ばかりのピノキオは、落ち着きがなく、躾のなっていない子供である。
学校へ行ったはずがキツネに騙され…って、キツネ達は出てこない。
自分が知っているストーリーとはちょっと、いや、かなり違う。
シン・ピノキオかな。
なかなか面白かったよ!
子供の頃の話忘れたなあ。
このピノッキオも良かった。
あんなラストもいいよね。
お猿さんは、いなかったような。
意外とエエ奴やん。
従え、服従しろ
兵隊になれ
って
まさしく今もそんな感じやん。
大人のための寓話
Disneyが贈る名作「ピノキオ」とは少し異なり
大人の童話と言ったところでしょうか。
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Disneyのピノキオは「木彫り人形」とは言え
肌質的なものが人間に近しい反面
本作では、しっかりと木材の材質感が伝わる風貌で、
よりリアルな「人形」になっています。
正直かわいくはないw
そのため、周りから物珍しがられる理由も
迫害を受ける様も人間になりたいという夢も
とても現実的です。
「嘘をついたらピノキオみたいに鼻が伸びるよ」なんて
嘘をついた子どもを叱りつける母親の常套句よりも
「命」の儚さと尊さ、親子愛、他者を思いやる心
戦争の恐ろしさがしっかりと伝わってくる印象的な
作品となりました。
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すでにNetflixで配信されていますが
第95回アカデミー賞で#長編アニメーション賞 を
受賞したことから、劇場でアンコール上映されていたので
劇場で鑑賞してきました。
劇場鑑賞出来てよかったです。感謝
松ぼっくりが落ちる。それで、人間である意味をこの映画は解いている。
『僕もパパも怖くない。戦争大好き』さて、ピノッキオはそう言うが、鼻が伸びなかった。伸びればなぁ!って思ったが。それは
兎も角
『幸せだった。だから、こんなに悲しいんだ。』って台詞が良かった。
原作の終わり方と違うが、それも良かった。
松ぼっくりが落ちる。それで、人間である意味をこの映画は解いている。命があるから人間で、命あるもの必ず死を迎えるって事だ。
姿が最後まで変わらないのが、彼らしい表現だ。そこが傑作たる所以だ。
知ってるようで見た事ないピノッキオ
ギレルモ・デル・トロが『ピノッキオ』を描く。
数年前に企画・製作を聞いた時から非常に気になっていた作品。だって、ぴったりの人選ではないか。
『ピノッキオ』と言うと、ディズニーアニメの印象でハートフルなファミリー・ムービーを思い浮かべるが、去年日本公開されたイタリア製の『ほんとうのピノッキオ』ではより原作の持つ風刺性やダークさも実はある。ディズニーアニメ版も教訓など込められていたが。
ダーク・ファンタジーと言えば、デル・トロ。『パンズ・ラビリンス』の無垢な少女、『シェイプ・オブ・ウォーター』の純愛などピュアな心もある。
まさに、うってつけ。デル・トロ以外だったら、ティム・バートン辺りか。
(一度でいいから、ティム・バートン×ギレルモ・デル・トロのコラボを見てみたい…)
映像化は数知れず。去年~今年にかけて本作含め3本も映画化され、『ピノッキオ』の話なんて一分で説明出来るくらい。
しかし本作は、デル・トロによる大胆翻案、新解釈などを加味。
そこら辺が重要ポイントにもなっており、知ってるようで見た事ない、新しく彫られ命を与えられたピノッキオとして生まれ変わった。
ピノッキオの誕生過程は…
木彫り名人のゼペットじいさんが喋る丸太を彫って…というのが、原作の設定。
ディズニーアニメでは、ブルー・フェアリーの魔法によって命を与えられて。
本作は新たな要素。
愛息子カルロと幸せに暮らすゼペット。息子設定が新要素。(尚、息子の名は原作者から取られているよう)
町の皆から愛されている仲睦まじい親子だったが…。時は戦時中。戦闘機の爆弾投下によって、カルロは犠牲に…。
悲しみに暮れるゼペット。息子が遺した松ぼっくりから生えた松の木から、今一度息子に会いたい為に、亡き息子に似せた木の人形を作る。
そんなゼペットの姿に心を痛めた木の精霊が、人形に命を与え…。
これまではただ“作る”だけだったが、本作ではそれに動機を与え、親子としての物語を色濃く打ち出している。
そう。これまでも擬似親子の物語ではあったが、本作はより一層、親子の物語となっている。
亡き息子を忘れられないゼペット。
そんな“パパ”の為に、カルロに変わって良き息子になろうとするピノッキオ。
一見するとハートフルな物語のようだが…
息子を亡くしたゼペットは酒に溺れ…。時々癇癪を起こしたり…。
ピノッキオの性格もより無邪気で腕白に。その口から生まれたようなお喋りさは、時々ゼペットもうんざりするほど。
これまでは本当の親子のように仲のいいゼペットとピノッキオ。
が、本作では苛立ちや本音などのリアルな感情も吐露。
ある時ピノッキオの起こした面倒により、苛立ちがピークに達したゼペット。つい口から出てしまう。
本当の息子じゃない。お前は重荷だ。…
ただ優しいだけじゃないゼペット。ただいい子だけじゃないピノッキオ。
弱さや脆さや欠点もあって。
ただのファンタジーの世界の住人ではなく、複雑な内面を持ち合わせた事により、共感や感情移入出来るキャラに。
そんな二人が試練を乗り越え、お互いを必要とし…。
ゼペットはピノッキオへの本当の愛に気付き、ピノッキオはパパの為に。
より深く彫られた親子愛の物語が胸打つ。
ピノッキオを襲う誘惑や試練。
口だけ達者な詐欺師キツネやロバの姿に変えられたり…。
本作では欲深い人形劇師。
ロバにはならないが、ファシズム派の市長により戦争へと駆り出される。
エゴの塊の大人たち。
生きている木の人形を気味悪がり、差別や偏見。
そんな社会や体制を風刺。
しかし、いつまでも抑えられ締め付けられているばかりではない。
ピノッキオと次第に友情を育んでいく弱者や子供。
人形劇師の奴隷のサル=スパッツァトゥーラは、当初は主人に忠実でずるがしこかったが、虐げられ、ピノッキオと反逆する。
当初はピノッキオが疎ましかった市長の息子。少年兵訓練の場でピノッキオと友情が芽生え、父親からの落胆と横暴に反発する。
小さな存在が何かを動かす。そのきっかけは、一握りの勇気と、不思議な木の少年…。
クライマックスはお馴染み、ピノッキオを探しに出たゼペットが、海で○○に飲み込まれ、同じくピノッキオも飲み込まれるも体内で再会し、脱出劇。
○○が鯨であったり鮫であったりするが、本作では怪物のような超巨大魚。そのグロテスクな造形が、いかにもデル・トロらしい。
クライマックスは大作も手掛けるデル・トロならではのスリルや迫力。
荒海の描写も素晴らしい。途中、本作がストップモーション・アニメである事を忘れてしまうほど。
本作、ストップモーション・アニメなのがさらに効果を上げている。
映画やアニメーションであると同時に、何処か人形劇のような演出。
ストップモーション表現により、ピノッキオの動きもユニークに。
ピノッキオの造形も特色あり。これまではもって可愛らしかったり人間に近いビジュアルだったが、本当に“木の人形”。ひょっとしたら、これまでで最も“らしい”ピノッキオかもしれない。
時々面倒起こす腕白だけど、健気でひたむき。その姿に、木の人形だろうと生身だろうと変わりない。
お馴染みコオロギのクリケットやグロテスクな巨大魚、より木の人形らしくなったピノッキオなど、ちょい不気味であったり異質なキャラ造形。死後の世界や死の精霊など、『ほんとうのピノッキオ』と通じるダーク・ファンタジー色。
風刺や死後の世界でトランプ遊びに興じるウサギなどのブラック・ユーモア。
それでいて、ディズニーアニメのようなハートフルやファミリー性もある。
アレクサンドル・デスプラの音楽やミュージカル要素。
豪華なボイス・キャスト。ケイト・ブランシェットはどのキャラの声?…と思ったら、あのサルのスパッツァトゥーラ役とは、何て贅沢!
これまでのそれぞれの『ピノッキオ』の要素や魅力を一つにしたような、唯一無二のピノッキオ。ギレルモ・デル・トロのピノッキオ。
『ピノッキオ』の映像化作品としては、ディズニーアニメと並んで印象や記憶に残る作品になっていくだろう。
星に願いを。夢は叶う事を信じさせてくれたこれまでの『ピノッキオ』だったが、本作はギレルモ・デル・トロ作品であり、親子の物語であり、もう一つ。
命の物語。
木の人形故、不老不死のピノッキオ。何度か死ぬが、その度に生き返る。
が、ある局面で迫られる。永遠の命か、一度きりの命か。ゼペットの命か、自分の命か。
限りある命や避けられぬ死があるからこそ、生きるとは時に悲しく切なく痛々しくも、尊く愛おしい。
試練や冒険を乗り越え、晴れて“家族”となったゼペットとピノッキオとクリケットとスパッツァトゥーラ。
いつまでも幸せにめでたしめでたし…ではなく、ゼペットが旅立ち、クリケットやスパッツァトゥーラも…。
一人残ったピノッキオ。切なくもあるが、彼のその後は…? 不思議な思いを馳せ、余韻を残す。
限りある命を。
ギレルモ・デル・トロはただのダーク・ファンタジー作家ではない。
ピュアなハートの持ち主である事を改めて感じさせてくれた。
私たちが好きだったデルトロはもういない!!
デルトロはアカデミー監督として有名人になってしまったので、往年のダークファンタジーや作家性を期待すると、ごく普通のピノッキオで裏切られます。原作寄りの残酷なストーリーでもなく、ピノッキオは生まれたばかりなのに生意気で終始落ち着かない性格の為、愛着が沸きません。やたら戦争に行きたがっているので、戦場を経験してくれば良いのではないでしょうか。同時期のネトフリ「スクルージ」と同じく、時折とりあえず作ったような親しみ難い歌のシーンで尺稼ぎをしているのも、こちらは全く楽しい気分ではないのでイラつきます。ピノッキオを題材にして、ディズニープラスを出し抜こうとして失敗した印象です。
まさに「ギレルモ・デル・トロの」ピノッキオ
まず、これぞギレルモ監督作品だなと感服。
ダークで悲惨で物悲しい。だけどちゃんと救いもあって、クスッと笑えるシーンもある。
監督の作品が大好きで過去の作品はすべて見ていますが、結末は一番温かい気持ちになれた。
物語始めの仲の良い父ゼペットと息子カルロの生活がとても微笑ましいけど、第一次世界大戦時の話だし、そもそもギレルモ監督だし、どこかで一気に悲惨なことになるはず…とびくびくしていたら案の定。教会にピンポイントで…というのも悲劇。
愛する息子を失った悲しみ(とやや憎しみ?)に塗れながら作った木の人形に、妖精が命を吹き込んで生まれたピノッキオ。
誕生したばかりのピノッキオは歩き方・動き方がおぞましく、顔もちょっと異形寄り(個人的な感想です)。素直にかわいいとは言えないのだが、物語が進むにすれてめちゃくちゃかわいく見えてくる。
自分が誕生したことをとても喜び、色々な物に興味をひかれて、楽しい面白いと歌うピノッキオ。
当然だがピノッキオは世間をまったく知らず、突飛な行動ばかりするので、ゼペットはちょっと困り気味。
ピノッキオに愛する息子カルロのように育って欲しいと願うゼペットじいさん。
カルロではないしカルロにはなりたくないピノッキオ。
どちらの思いも分かるから、すれ違ってしまうのは悲しかったな…。
印象的なシーンはピノッキオがゼペットじいさんの元を去るシーン。
ゼペットとの約束を守らず学校に行かず、甘い言葉に誘われてカーニバルへ行ってしまい、結果大事故が起きてしまう。
あまりのショックと疲労感からか、怒ったゼペットがピノッキオに「なんて状況にわしを追い込むんだ。どうしてカルロのようになってくれないんだ。おまえはとんでもない重荷だ」と暴言を吐く。
当然、ゼペットじいさんは人間なので嘘をついても鼻は伸びないが、ピノッキオはそれを知らない(自分と同じで嘘をつけば鼻が伸びると思っている)ので、ゼペットの鼻は伸びなかった=本音を言ってるんだと思ってしまう。
生まれたばかりのピノッキオが「パパを傷つけてどならせたくない。パパの重荷になりたくない」と家を出ていくシーンは本当に悲しかった。
人間ではないし、血が繋がった息子でもないけど、子どもの口から出る「重荷」という言葉がこんなに辛いとは…。
ピノッキオを慰めるセバスチャンの「父親も絶望することがあるんだよ。そして一時の感情に任せていろいろ言ってしまう。だがやがて気付く。本気じゃなかったと」という台詞は、多くの人が身に覚えのあるものじゃないかと。
後々この台詞がまた出てくるシーンがあるけど、そこも切なかった。
個人的にはセバスチャンによく頑張ったで賞をあげたい。
そしてキャンドルウィックにも幸せになって欲しい(生きてるよね?)
良い映画
スタンダードなストーリと思って観ていたら、オリジナルな物語が大部分を占めていて、ちょっと予想外…というか、度肝を抜かれました。
まぁ、面白かったかどうかは別として…(笑)
この"ピノキオ"は最後、人間にはなりませんでしたね。ありのままの自分を好きになって欲しい、ありのままの自分でいいじゃないか…というメッセージでした。かなり現代的なテーマを含んだ作品でしたね。
それなりのストーリーでしたが、個人的には、今ひとつ琴線には響かなかった…というのが、正直な感想です。
もし子どもが初めて接する"ピノキオ"の物語が、この作品だったら、ピノキオは戦争のお話と思い込むんでしょうね。キャラクターの造形といい、その世界観といい、幼い子どもには何かとトラウマになる作品かもです…(笑)
ロッテントマトを含め、作品の評価は総じて高いようです。
上映館は少ないので、気になる方は、早めに劇場へ行かれることをおすすめします。
すばらしかった
ピノキオの話は知っているようでよく知らない。おじいさんの身の上が気の毒すぎる。ピノキオがめちゃくちゃかわいい。子どもそのもののようでずっと見ていたい。ストップモーションアニメのような動きもよくて、ストーリーもとても面白い。
関係ないけど、『すずめの戸締り』で椅子に人格が宿っていたのだけど、特に何も感じることがなくて、椅子だからしかたがないのかもしれないけど、木の人形がここまでかわいく思えたことに、自分にそんな気持ちがあって安心した。椅子にも応援したい気持ちになりたいものだ。
僕はピノッキオ 〜 松の木の少年
ピノッキオの肩に打ち込まれた釘にドキリとさせられたが、少年らしい邪心の無い声( グレゴリー・マン )と、その天真爛漫さに引き込まれていった。
ピノッキオが、友( 心を通わせるシーンがいい )や仲間と出会い、逞しく成長していく。
コオロギのセバスチャン役のユアン・マクレガーがエンドロールで聴かせる✨
我が子に対する愛、他者を思い遣る心、戦争の恐ろしさを、ギレルモ・デル・トロが印象的なアニメーションで描いた作品。
映画館での鑑賞 (字幕版)
【ギレルモ監督が、戦争の愚かさと命の儚さと大切さを、オリジナルを尊重しながら丁寧に描いたストップモーション映画。今作はギレルモ監督のオリジナルストーリー部分が秀逸である作品でもある。】
ー 今作は、題名の通りピノッキオが主人公だが、ギレルモ監督が戦争の愚かさや、命の儚さやそれ故に大切にしなければいけないというメッセージが込められている作品である。-
◆感想
・ストップモーション映画は、私が過去観た中で面白くなかった作品は皆無だが、この作品も然りである。
茶色を基調にした、ピノッキオを始めとした人形の質感が素晴しく、動きもショット数が多いからだろうが、滑らかである。
・原作には出て来ない、コオロギや悪徳な人形遣い、人形遣いが飼う猿と言った、キャラクターの立ち方も良い。
・ムッソリーニを信奉する愚かしき市長と、父に認められたい息子の、ピノッキオを巡る葛藤のシーンも、印象的である。
ー 子供たちに、戦争に向けた練習をさせる愚かしさ。-
・性格(温かい、冷酷)が違う、森の精と姉妹が、ピノッキオに命の尊さを教えて行くシーンの設定も斬新である。
<ピノッキオの映画は、「ほんとうのピノッキオ」を観ていたが、今作はギレルモ監督のオリジナルストーリー部分が秀逸である。
当初は、ヤンチャだったピノッキオが、ゼペットを助けるために、冷酷な森の精にお願いした事。そして彼はゼペットを助けるが、命を失う。
だが、温かい心を持つ森の精に命を与えられるシーンは、”命の大切さ”を見る側に伝える幻想的で美しきシーンである。
お近くのイオンシネマでこの作品が掛かっていたら、観賞する事をおススメしたい作品である。>
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