「元ネタ知ってたら嬉しくなる」ビューティフルドリーマー 赤足さんの映画レビュー(感想・評価)
元ネタ知ってたら嬉しくなる
アニメ版『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』を知っている人ならニヤリとできる、いわば“マニアックな楽しみ方”ができる映画だ。時間がループしていることに気づく流れや、温泉マークとさくら先生の喫茶店での会話、冒頭であたるが呆然と戦車の砲弾を見送る場面、ラスト間際の面堂・さくら先生・あたるのやりとりなど、アニメで印象的だった瞬間を実写にうまく落とし込んでいる。派手さはないが、その“手作り感”も含めて味わいがある。
一方で、元ネタを知らない観客には「なんじゃこりゃ?」と映るかもしれない。アニメを前提にした仕掛けが多いため、入り口は狭い。しかし、知っている人にとってはオマージュの積み重ねが嬉しく、懐かしさと新鮮さを同時に味わえるのが魅力だ。
ただこの映画は単なる実写化ではなく、“映画を作ること”そのものを描いた青春群像劇でもある。映画研究会の学生たちが“呪われた脚本”を手に自主制作に挑む姿は、文化祭前夜のような熱気に満ちており、資金集めや撮影準備に追われるリアルさが観る者を巻き込む。映画の中で映画を撮る、という入れ子構造も相まって、夢と現実の境界が曖昧になっていく感覚は、まさに“ビューティフルドリーマー”そのものだ。
呪いの正体や脚本の謎はあえて説明を避けており、観客に委ねられる部分が大きい。そのため物語の明快さを求める人には不満も残るだろうが、自分としてはこの曖昧さも含めて「映画そのものの夢を見せられた」と感じた。リメイクというより、“あの名作から派生したもうひとつの夢”に立ち会った感覚である。
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