「HHBと韻文をラップする今の時代のシラノ」ナショナル・シアター・ライブ「シラノ・ド・ベルジュラック」 mikyoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0HHBと韻文をラップする今の時代のシラノ

2020年12月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

舞台セットはコンクリートの壁とプラスチックの椅子でミニマム。ビートボクサーがいて、気がつくとリズムが聞こえる。

シラノは剣も強いが言葉に強い。セリフが散文で今の時代通常だと優雅な感じになってしまうが、彼は兵士でもある反骨心溢れた男であるので、英語でもスコットランド発音だし、詩もラップする。

基本的な17世紀半ばの設定とか、三角関係とかに変わりはない。遠い従姉妹である美しく知的なロクサーヌに思いを募らせ、自分の醜さゆえに拒絶を恐れ悶々とした気持ちで手紙を大量生産するところなど、基本は変わらない。

クリスチャンも若くて今っぽくて美しいがアホっぽい。話し方がイヤミにならないレベルでチャラいのがいけてる感じ。

ロクサーヌはロクサーヌだ。

ここまで言っておいてなんだが私はそもそもシラノ・ド・ベルシュラクが好きじゃない。なぜならどうしてもロクサーヌが好きになれないから。ロクサーヌは注文が多くて美人なアホだ。そしてその設定がないとストーリーが成り立たないので、それが変わることはない。

このロクサーヌもシラノ同様、優美さより元気だし勝気だし魅力的だ。しかしやっぱり本当に見る目がない。

この長いこと愛されている戯曲は、フランス人のすれ違い愛に対する情熱が共感できないと厳しいと思う。

mikyo