海辺の彼女たちのレビュー・感想・評価
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異化の力
聞き慣れているはずの日本語。見慣れているはずの日本の風景。それらが、よそよそしく寄る辺ないものに感じられる。知らないうちに、不法就労のベトナム人女性の感覚に共感していたのだろう。これぞ、この映画の表現の力なのだと思う。
物語内では外国人を低賃金労働者として搾取する道を作る技能実習生制度は焦点化されない。マクロな視点からの問題提起ではなく、一貫して技能実習生制度によって日本にやって来たベトナム人女性のミクロな視点から捉えられた世界を映し出す。それだけに、異国の地で制度に守られずに働く事の不安感がしんしんと伝わってくる。
日本で働いて家族に仕送りをしたいと願っていただけなのに、(極悪人ではなく)不誠実な人間に出会ってしまっただけで、恐ろしい困難に陥ってしまう。この映画は、困難な状況に陥った人に国や言語を越えて共感する事の大切さを教えてくれる。そこを飛び越えて、制度の不備を批判したり、反対に、不法就労である事を以て自己責任と突き放しても、その言葉に説得力は宿らないのだろう。
移民大国日本の現状をリアルに描く傑作
人間って酷いね…
ベトナムから技能実習生として来日した、3人の女性たちの過酷な物語。
〝物語〟といっても、現実に1万人弱の技能実習生が低賃金や劣悪な待遇、ハラスメントを理由に失踪し不法就労者となっているそうで、この作品で描かれている事象はフィクションではなくリアルな現実だ。
3人のベトナム人技能実習生を演じたのは、ベトナムでのオーディションで選ばれた俳優たちだそうだが、これはドキュメンタリーではないのか?と錯覚してしまうほどの圧倒的なリアリティーがあった。
特にフォンという女性が、無音の中で重い決断を下すラストシーンは鳥肌ものだった。
安い賃金で使い倒すことのみを追求し、不法就労と知りながら雇う日本人雇い主。
同胞の困難につけ込むベトナム人ブローカー。金になれば在留カードの偽造も厭わない不良外国人。
「妹に自転車を」「兄弟を大学に」「親の借金を返したい」と日本にやって来た彼女たちを、寄ってたかって傷付けていく様は残酷だった。
ラストシーンまで、微かなの救いも与えてくれない作品ではあったけど、日本人がこの作品を撮り、コロナ禍の中でほぼ満席の観客がこの作品を観たということが、僅かな救いになるのかな…
海辺の彼女たちは即ち、我々なのだ
外国人技能実習生の実態については、ほぼ低賃金の肉体労働者扱いであることはよく知られている。ベトナムから日本に来るだけでブローカーやエージェントに支払う手数料が合計100万円にもなる。物価の差を考えれば、ベトナムでの100万円は日本での500万円くらいに相当する。それを本人や親が借金をして支払い、日本に実習生として行く訳だ。
そうまでして日本に来る理由は、金が稼げるからの一点だ。日本で稼ぐ金は為替差を考えるとベトナムでは大金になる。日本円の10万円はベトナムでは50万円くらいの価値になる。ベトナムに限らず、為替差がある国からは日本に来て働く人が多い。その多くが就労するのが単純労働である。
単純労働とは同じことの繰り返しを行なうことで、日本人の労働者がたくさんいたときは、アルバイトがその役割を担っていた。パートやアルバイトは臨時雇員と呼ばれ、繰り返し単純労働力として雇用の調整の役割を果たしていた。仕事が忙しければたくさん働き、暇であればシフトが削られ、自動的に賃金も少なくなる。日本が少子高齢化で労働力が不足しはじめると、今度はその役割を外国人が担うようになったという訳だ。
外国人に対して簡単に労働ビザを発給する訳にはいかないから、技能実習生という抜け道を考え出したというのが実情だと思う。「技能実習」という名前の単純労働を毎日長時間やらせるのだが「実習生」という名目だから労働法に反するような待遇が平然と行なわれる。逃げ出す実習生が多発するのも当然だ。
本作品は技能実習生としてベトナムから出稼ぎにやってきた3人の若い女性のその後を描く。技能実習生の制度が問題点だらけなのは既に世間に知られているが、逃げ出した人たちのその後までは不明である。ベトナム人が豚を盗んだりする事件は報じられているが、既に不法移民と化した彼らの総人数や生活の実態などはわからない。
本作品の彼女たちはその中でも悲惨な境遇に陥った事例のひとつだと思う。ベトナムの父親からかかってくる電話は送金を催促するだけだ。当然だろう、父親も借金を背負っていて、のっぴきならない状況にある。日本で稼ぐ彼女たちだけが頼りだ。そんな彼女たちの仕事はといえば、同じことの繰り返しの単純労働である。
台詞の少ない作品だが、彼女たちの心の内が聞こえてくるようだった。こんなにまでして生きなければいけないのか、なぜ生まれてこなければならなかったのか、なぜ親は自分を生んだのか。彼女たちのひとり、フォンの選択が本作品の最大のヤマ場だが、既に心は決まっている。というより選択肢はひとつしかないのだ。それが逃亡した技能実習生の運命である。
人間は過酷な環境にも慣れる。繰り返し単純労働力としての人生だとしても、それを否定されるいわれはない。しかし人格が蹂躙され続ける人生は奴隷の人生である。技能実習生はすなわち奴隷なのだ。逃亡すれば不法滞在者となり、捕まれば出入国在留管理局の牢屋で死ぬまで放っておかれることもある。実際に名古屋の入管で今年(2021年)の3月にスリランカ人の女性が亡くなっている。そんなふうになるのを恐れれば、タコ部屋での単純労働の毎日に耐えるしかない。借金を返し終えても待つのは地獄かもしれない。
八方塞がりの人生を描いた悲惨な作品だが、一寸先が闇なのは誰にとっても同じことだ。彼女たちの運命がとても他人事とは思えなかったし、藤元明緒監督も他人事として観てほしくなかっただろう。海辺の彼女たちは即ち、我々なのだ。
技能実習生と言う名の出稼ぎ
ベトナムから技能実習生として来日した3人の女性が、東京の職場から逃げ出し、ブローカーの紹介で雪国の漁港で働き始める話。
管理団体や支援組織や入国管理局等、相談するべきところは多々あるけれど、そこについてはまるで触れられず、失踪する様子から物語がスタート。
お堅いこと言うと、やはりそれがまるで無いからモヤモヤするし、自業自得にも感じるし、イマイチ主人公達に肩入れする思考になれないんだよね。
そしてそんな中体調不良で…やっぱりそうですよねぇ。
在留カード+保険証get以降の展開で色々シャットアウト出来たし、人情的な流れとか、哀しさとか、色々と急激に盛り返した感じでそこからは素晴らしかった。
でも、その反面、やはり後の人のことを考えていなかったり、何とかなるやだったりな思想とか、心情としてはわかるところもあるけれど、所詮マネーなところとか、倫理面での個人的な感情に受け入れられないところが、悪い方向で引っ掛かってしまった。
昨今問題になっている不法就労の在日外国人を扱った作品。現在進行形で...
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