「【"自由を求めての、生死を掛けた隠れんぼ。"そして、刑務所長の懊悩と、彼が血の通った人間として、決断した事。】」ウォーデン 消えた死刑囚 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【"自由を求めての、生死を掛けた隠れんぼ。"そして、刑務所長の懊悩と、彼が血の通った人間として、決断した事。】
■感想<Caution! 内容に触れています>
ー ヤヘド刑務所長(ナヴィッド・モハマドザデー)が治める刑務所は、新しい空港建設のため立ち退くことになる。そして、収容されていた囚人たちは、別の刑務所に護送されることになった。だが、別の収容所に移された囚人の数が1名足りない。何度数えても足りない・・。ー
・ヤヘド刑務所長は、最初は何の躊躇いもなく、逃亡した"死刑囚アフマドを追っていたのは、明白である。勿論、自らの出世の妨げとなるからである。
ー アフマドが何故死刑囚になったかは、劇中断片的に語られる。真相は分からない・・。ー
・だが、アフマドの無実を訴える女性社会福祉士(パリナーズ・イザヤドヤール)の言葉や、アフマドの妻と幼き娘の姿を見て、ヤヘド刑務所長は、徐々にアフマドの罪に疑念を抱いていく・・。
- アフマドの姿を一度だけ、遠方から映しただけで、劇中に描かない手法が秀逸である。
又、彼がカエルを秘かに飼っていた事からも、人間性が伺われる気がする・・。
そして、自らの立身出世が目の前にぶら下がっていながら、沸き上がる疑念を振り払う事が出来ないアフマドのイラつく姿。-
・そして、唯一のアフマドの犯罪の目撃者とされていた老人が”夢の中で業火に焼かれる・・。眠れない・・”と言って語った真実。
・それでも、自分の出世のためにヤヘドは、或る策をアフマドに仕掛けるが・・。
<移送される絞首台に隠れていたアフマドを追い詰めたヤヘド刑務所長、女性社会福祉士、アフマドの妻と娘の表情を次々に切り取ったアングル及び、最後まで表情が見えないアフマドの切羽詰まった呼吸音・・。
そして、隠れているのがアフマドであると確認したヤヘド刑務所長が取った”正しき人間としての”行動。
それまでの表情とは一変するアフマドの妻と娘、女性社会福祉士の表情の変化が、実に印象的である作品。
<2021年4月11日 刈谷日劇にて鑑賞>