私というパズルのレビュー・感想・評価
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なんで自宅でうむかなあ?
個人的には、出産シーンに露悪を感じた。
赤裸々な描写が、見る者を釣っている──ように感じてしまった。
妊婦の絶叫って、すごく効果的なアイキャッチになる──と思いませんか?出産と死に目って、抗えませんよね?
出産はたいへんなことにちがいない。
そのこと自体に議論の余地はない。
だいたい男なんて、傍らのラブーフがそうだったように、オタオタしている以外、することなんて、なにもない。
ただけっこうリアルな分娩を見せるのが、方法として、鼻についた。
なんでそこまで見せるの──という感じ。
そう感じたのは、基本的にわたしが食えない奴だからでもある。
海外評が参考になった。
ウィキペディアの引用なのだが、こうあった。
『(~中略)『私というパズル』のオープニングシーンは実に衝撃的なものだが、それで得たパワーを持続するのに苦戦している。しかし、ヴァネッサ・カービーの演技のお陰で、死産の悲しみを切実に描写することには成功している。』
(ウィキペディア「私というパズル」より)
なんと見事な考察。
これはRotten Tomatoesの批評家の見解の要約となっていた。
tomatoesではハッとする発言を見つけることがしばしばある。
オープニングが衝撃的だから、そのあとのドラマ部が、なんとなく沈滞する→だけどカービーの演技がそれをくつがえしている・・・簡潔で明断である。
冷静に考えてみると、この夫婦は、自宅で分娩をすることを決め、助産婦をたのんで、挑んだわけである。その是非は言わないが、設備や経験などの不備により、不測の事態も了解していたはずだ。それは弁護側も突いている。
自宅出産というものは危険や責任を伴うものであり。どちらかといえばパンケーキを潰す芸人やるようなDQN行為なのではないだろうか。
よくわからないが。
もし、この映画のオープニングで「衝撃的な」出産シーンがなければ、たんに、自宅出産によって産んだ子を数分で死なせた夫婦──ってだけが知らされる事後のドラマであれば、映画ぜんたいが瓦解してしまっただろう。
ただでさえ自己責任論に寄せがちな日本人は、なんで自宅出産なんかしたんですか、それで助産婦うったえるって責任転嫁だろうが──みたいな感じで、忿懣がくすぶってしまい、事後ドラマなんか見てはいられない──からだ。
それを、完全に抑えてしまうのが、オープニングの出産シーンだった。のである。
あるていど露悪でも、半裸と苦痛と産んだ子がすぐに亡くなった──の劇的なオブセッションを、最初に置いたおかげで「DQN夫婦の自宅出産」という負の場景をスポイルすることに成功している──わけである。
そのオープニングの衝撃により、観衆は、すんなりと、彼女の悲しみに寄り添うことができた。
──はずだが、個人的には彼女に振り回されるショーン(シャイアラブーフ)が、気の毒だった。
出産時は、励まし、楽しませ、ことさら元気に振る舞って、マーサ(ヴァネッサカービー)を大事にしていたし、死産後は彼女の深い虚無感に巻き込まれる。俺だってすげえ悲しいんだ──の感じが痛々しかった。やはりラブーフじょうずだった。
だから結局、マーサ、なんで自宅出産にこだわった?──に戻ってきてしまう。
個人的には、上述したように出産が衝撃というよりは露悪だったわけで、むしろSarah Snookが演じていたDAの尻軽度のほうが衝撃だったが、この話をなんとなくさわやかにしていたのがりんごだった。
ずっとりんごを伏線してきて、ラストにしっかりシンボライズし、それがきれいに決まっていた。──と個人的には思った。
誰にとっても、いいことがない、この話が、りんごによって後味さわやかにまとまる──わけである。
ところで、映画のキーパーソンは、助産婦エヴァ役のMolly Parkerだったと思う。初見から、かのじょにはまったく害心が見えない。すこしも愚かに見えない。
彼女の賢明・博愛・献身の見ばえが、この自宅出産を、不幸な事故にしていた。あなたが付いていたならば、それは事故だったにちがいない。という感じ。
悲劇→混迷→再生というドラマ曲線は、オープニングとエンディングだけ出てくるMolly Parkerの善良な見た目、なかりせば、達成できなかった。監督はかんぜんに意図的にエヴァ役をMolly Parkerに振ったと思う。
それも、ふくめちょっと発声できない感じの監督(名)だけど、かなりの遣い手だと思いました。
美しく強く、でも弱い
死産を経て人生が一変した女性が、辛い経験と自分の気持ちに向き合っていく姿を、台詞で説明せず画や表情で伝え、鑑賞者も想いを巡らせる余白を取りながら描いていました。
死産の後も淡々と、でも生気なく過ごすマーサ。逆に周囲の人々の方が怒ったり悲しんだり感情的になっている。このあたりのやり取りがリアルで、マーサを想っての行動なのか、自分のやり場のない思いをぶつけたいのか、どっちとも言えるショーンや母がもどかしく、でもしょうがないよなと、何とも言えない気持ちに。。
そして自分の意思を貫いたことが少なからず悲劇の一端を担っていたと考えてなのか、現実から目を背けているようにも見えたマーサの、最後の法廷での言葉は響きました。よく頑張った。
女性の強さと弱さが出産という人生のターニングポイントを通して描かれていました。
メインテーマ
夫婦、母娘、格差?
最近感じること…盛り込み過ぎでは?と感じる作品が多いような。
作品のメインテーマがひとつだと物足移動思うのか?
あまりに多過ぎると作り手の伝えたいメッセージがわかりづらくなるのだが。
何の前知識もなく観た作品。冒頭30分近いお産のシーン。産声が聞こえた時、不覚にも涙が出てしまった。
これで終わってもいいと思ったくらい。(笑)
冒頭から場面は一転し、暗いシーンが続く。夫婦の会話、気持ちのズレ。そこはわかりやすい展開だが、やはり辛い。母親が辛いのは当然だけど、旦那さんがかわいそうだったなぁ。
なぜ旦那さんにまで心を閉ざしてしまったんだろう。(そもそもどうやって出会って結婚したのか、うまくいっていたのか、そこはわからないが)
破水から死産まで約25分圧巻の長回し!でも序章に過ぎない…
この映画観て子どもほしいと思う人は度胸があるなと思います。AKBのドキュメンタリー観てもアイドル志望する人もいるくらいだから、女性って色々と根本的に男とは違うのかなと思ったり。自分が独身なので、結婚すると気持ちは変わってくるのかなと思ったり。つまり、また己を取り巻く環境が変わるたびに見てみたいと思うくらい重厚で考えさせられる作品でした。
とにかく序盤の破水から死産までの長回しが圧巻で見どころがあります。まず、夫の頼りなさそうであたふたしてるけども、妻のために何とかしようとする姿に共感。しょーもないジョーク言ったり、スキンシップとったり、妻もどう思ってるんだろうって感じさせられました。また、本来来るはずではなかった別の助産師さんが来たということで、夫妻が微妙に代わりの助産師を信頼してないように見せるところも良かったし、助産師も曖昧な返事をたまに使うことで、どこか掴みどころがない、でもベストは尽くしているという感じが伝わってきました。
死産から完全に心を閉ざしてしまう妻。何としてでも裁判をして勝たせたい母。夫もその策略に上手いこと乗っていく。妻は身体は母親のまんま。胸は張ってしまうし、周りの子どもたちの様子を見ていると母性がくすぐられるからか、うっすらと母乳が出てしまうシーン、かなりしんどかったです。
最終的に家族がどうなり、助産師との裁判はどうなっていうのかはネタバレになるので避けますが、非常に心理描写が丁寧でありつつ、良い余韻も残る作品でした。
少し気になったところは、自宅出産=悪っぽく描かれているように見えてしまったところですかね。あと、死産のあとは然るべき自治体や団体からフォローがあっても良いものかなと思いました。
橋がかかる --- 母娘の物語
《橋》コーネル・ムンドルッツォ監督 × ヴァネッサ・カービー主演(熱演!)のドラマ。一筋縄ではいかない印象・個性的作品を世に送り出してきた感のある監督の新作に、他にもシャイア・ラブーフ、エレン・バースティン、ベニー・サフディなど素晴らしい役者陣キャスティング。そうした見事な演技で引っ張っていく。語弊を恐れずに言ってしまえば本作には犬も飛ぶという行為も、(宣伝で使いやすそうな)一種飛び道具のようなものはない至極真っ当なドラマ。ただ語り口は、膨大なページの内の何十ページ置きの数ページを丹念に描くことで他のページまで、間にどういった出来事があったのかを文脈に予感させる作り。こちらの想像を膨らませるのに十分な視聴体験を与えてくれる。そうして僕たちの人生、日常に悲しいかな起こり得る、降りかかる危険性のある残酷な悲しみ、ヘビーな題材を自宅出産の危険性にとどまらない、親子・母娘の物語として描き紡いでみせた。余韻がすごい。ヴァネッサ・カービーが、その悲しい出来事の前後でしっかりと顔が変わって見えるのも、すごいなと思った。
《リンゴ》長回しで見る者を引き込む圧巻の出産シーン。タイトル出るまで息つく暇も与えてはくれない。9月から10月、11月…そして月日は流れていく。癒えない時の中で時間を積み上げていく。深い深い悲しみ……NETFLIXと喪失、オリジナル映画で度々表れる要素。印象的な瞬間が本作には確かにある。例えば林檎という小物使い。また例えば冷蔵庫を開けるという何気ない仕草。一挙手一投足に目を向けさせる。そうした積み重ねで微かに、けど確かに主人公とその葛藤が見えてくる、感じられる気がする。流れる空気がごくごく自然体でまるで本当に日常を切り取っているようだから、その前後を予感させる。観客に想像の余地を与えるよう。ふとしたとき、何気ない瞬間に緊張感が走る。僕のラブーフ・センサーが働いた、彼が信頼すると決めたならそれは確かだと。ホワイト・ストライプスは良い。そして4月。
橋、家族3人が主役、陣痛は6分おき、ブロックンロール、サラダバー、キスして、何もかも知ってる、細かいこと、煙草、なぜ冷たい?触って、共振、ウソつきのクソ女、時間が傷を癒やす、カップルのバンド、自然に産みたかったから、信頼していました、あなたは"チーム"にこだわり…、リンゴの香りがした、その人は危害を与える気はなかった、償ってもらうことなど負可能だと言いたいわ、ルシアナ!
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