劇場公開日 2020年9月19日

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「「遺族の応報感情」について考える」おかえり ただいま h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0「遺族の応報感情」について考える

2020年9月24日
iPhoneアプリから投稿

死刑制度に関する議論は、イシューが複雑にからみ合っており(死刑の存置か、廃止か)容易に結論を単純化することは危険である。

この作品を観る人によって感じるポイントはさまざまだと思うが、個人的には「被害者遺族の応報感情」について深く考えさせてられることになった。

死刑制度肯定論の根拠のひとつが、「死刑でなければ、被害者が浮かばれない」「遺族の気持ちを考えると死刑もやむなし」と被害者遺族が加害者の死刑を強くのぞむ場合の応報感情(復讐感情といってもいい)にある。
本作品でも被害者の母親が加害者3人全員の死刑を強く要望している点がクローズアップされる。

しかし事件の詳細を読み込んでいくと、遺族の希望通りに3人全員が死刑に該当するかは強く疑問が残る。また、全ての殺人事件の被害者遺族が加害者の死刑をのぞんでいる訳でもない。また、加害者自身が死刑を目的にした殺害におよぶ場合は、逆に加害者の「利益」に資することになってしまう。

残虐な事件と裁判の行方が報道されるたびに、「被害者および遺族の人権はどうなんだ!」と「第三者」が反発するが、そこには当事者の意見は直接反映されることはない。

遺族の応報感情は、個別具体的なものであり加害者の死刑処置によって一律に全てが解決されるわけではない。遺族の感情回復と死刑制度云々と本当に不可分の関係なのかあらためて考える必要があるのではと思う。

前半のドラマ部分は脚本や演技の面で正直あまりいい出来とはいえない。だが、逆にドラマ部分の出来が完璧すぎると、とても直視できるようなものではなかったかもしれない。

atsushi