「トンネル内事故の避難は自己責任」トンネル 9000メートルの闘い odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
トンネル内事故の避難は自己責任
トンネル事故のパニック映画といえばスタローンの「デイライト(1996)」が思い浮かぶが本作はノルウェーの映画、お国柄なのだろうがこの手のディザスターものは地味、良くえばリアルっぽさを出したいのかドキュメンタリー調の描写、横たわるのは政府への批判とペシミズム。悲哀の作曲家エドヴァルド・グリーグを産んだノルウェーらしいと言えるでしょう。
冒頭からノルウェーのトンネルは避難口が設けられておらず、避難脱出は自己責任、2011年以降の火災事故で助かった例はないとの重大な問題提起のクレジット。脚本のシェルスティ・ヘレン・ラスムッセンは実際にあったトンネル火災事故に触発されて書いたらしい。
だから映画でも描かれる管理部門や救急隊もお役所仕事、火災原因のタンクローリーも衝突とか横転とか派手な事故でもなく運転ミスで壁に当たった程度、発火まで時間は十分あるのに危機管理がなっていない、救急隊の装備も非力、酸素ボンベが10分しか持たない小型なのはまるで解せない。
事態の把握もできずダラダラ応援部隊を待っている救急隊なのだがスタッフの娘がトンネルの中にいると分かると急に発奮して飛び込んでゆくのも、気持ちは分かるが寒すぎよう。
パニック映画では群像劇が定番だが子供を出汁に使って気を揉ませる手口は気が滅入る。
父親の再婚に抗う娘に悩む父親像とかもありきたり、なんと最後は業を煮やした再婚相手のおばさんが救出に向かいある種わだかまりが解けてハッピーエンド風に終わるのだが作りすぎでしょう。
クレジットにあったようにこんな有様がノルウェーの危機管理の実情なのかと思うと空いた口が塞がらないのだが、日本だってトンネルや橋の老朽化は現実問題、首都高の海底トンネルは一応、危険物運搬車両の通行は禁止だが実際に火災が起きてみたら避難に混乱する有様は大同小異かも、例によって国は想定外で済ませるのでしょう・・。できれば関係者の解説、生の感想が聞いてみたくなる映画でした。