劇場公開日 2020年8月28日

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「愚か者たちへの挽歌  リッグズ刑事の末路」ブルータル・ジャスティス レントさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0愚か者たちへの挽歌  リッグズ刑事の末路

2024年5月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

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「トマホーク」、「デンジャラスプリズン」と次々と傑作を世に出している監督の最新作。やはり相変わらず話運びはスローペースながらも随所に工夫が凝らされていて全く飽きさせない。いやあ、この監督の作品は一度はまると癖になる。

リーサルウェポンのリッグズ刑事やダーティハリーのキャラハン刑事は検挙率がいくら高くても強引すぎる捜査手法でただでさえ警察内部では厄介者だったのが、このスマホカメラが普及した現代ではなおさら肩身の狭い思いをすることになるんだろう。
実際本作の主人公リッジマンはいきなり麻薬の売人を逮捕しながらもその際の映像を撮影されて謹慎を食らってしまう。警察も今や人種差別への批判を何よりも恐れている。
妻は病気を抱え、娘が通学路で頻繫に襲われるような住環境で暮らすことを余儀なくされる厳しい経済状況の中、リッジマンは危険な賭けに出る。
そんな彼とコンビを組んでいたトニーも恋人と結婚間近ながら彼に渋々付き合う羽目に。

一方、車いすの弟や、売春、ドラッグにおぼれている母親を救うために家族思いのヘンリーは出所したばかりにもかかわらず危険な仕事を請け負うことに。

そして出産を無事終えたものの長い産休のせいで外出恐怖症になっていたエリーは愛する我が子のために勇気を振り絞り職場復帰を果たす。彼女が職場の銀行で手厚い歓迎を受けていた時、この三者の運命が絡み合うことに。そしてその後怒涛の展開を見せる。

ただ麻薬の密売人から金をくすめるつもりだったリッジマンたち、人は殺さず金塊だけを奪うと思って手を貸したヘンリー。しかし首謀者たちは情け容赦なく殺しまくる獣のような冷酷な連中だった。このけだものたちに彼らの運命は思わぬ方向に、まさに原題の通り思いもよらず地獄へと引きずり込まれることになる。

人種差別発言を繰り返すはみだし刑事役にメル・ギブソンを起用するセンスの良さ。他の登場人物たちのキャラもたっている。ビンス・ボーン演じるトニーは何かといえば「アンチョビ」と繰り返すのが可笑しい。かつての不祥事から口癖の差別的なスラングをあえて封印するためなんだろうか。

途中で意味深な登場をしたエリーがあっさり殺される辺りはこの監督がいかにもやりそうなこと。やはり期待を裏切らない。酒屋や若者からはした金盗むために重装備で撃ちまくる黒ずくめの二人もぶっ飛んでいて可笑しい。相変わらず意味があるのかないのかわからないようなとぼけた会話劇も健在。これがこの監督の持ち味なんだよなあ。

この監督の次の作品が待ち遠しい。

レント