「馬鹿で可愛い妻」スパイの妻 劇場版 落ち穂さんの映画レビュー(感想・評価)
馬鹿で可愛い妻
ただの貿易商が、偶然出会った程度で信用され、最高機密であるはずの軍部の生データを手に入れられるわけもなく、また、雲行き怪しい時代に白人の釈放のために大金を拠出するのも不自然過ぎており、更には妻が国民服を着るのも拒むくらい、もともと夫が欧米側の人間であることは明白。
しかし、主人公である妻は、機密情報を他国に持ち出そうとする夫の行為は義憤にかられたからだと信じる。その姿はあまりに愚かで、かつ、蒼井優の演技力のお蔭で可愛くも見える。
夫の部下を犠牲にしてでも夫を庇おうとした浅慮さも、証拠は2つ揃っていないと意味がないのに2人が1つずつ持って分かれて渡米しようという案を飲んでしまう愚鈍さも、全てが愛ゆえなのかと思わせるほど、妻がキュートだ。
とは言っても、所詮スパイごっこに興じているだけの妻は、見張り役がいることにも気づかないくらい愚かなので、夫に国外脱出の際にスケープゴートに使われてしまう。
「お見事です!」という台詞とともに失神した妻。夫が徹頭徹尾ウソしかつかない男だったのだと悟り、騙されて捨てられたと理解してのものだと思い、可哀想だなぁと思ったのも束の間、終戦後に夫に呼ばれるままにホイホイ渡米してしまうというラスト。
なんなんだ?
日本に取り残された場合、空襲で死ぬかもしれない状況になることは、夫には簡単に予想できたはず。つまりは夫にスパイ業より妻の命は軽いと判断されたわけなのに、よくそんな夫を許せるな~
夫も夫だ。なぜほとぼりが冷めたところで呼び寄せる?また利用するつもりなのか?
…ということで、色々考えさせられ、まぁまぁ面白かった。
蛇足だが、空襲の瓦礫のシーンが学生の舞台劇のセットレベルのちゃちさで、気分が落ちた。