「じわじわと考えさせられる」スパイの妻 劇場版 nakadakanさんの映画レビュー(感想・評価)
じわじわと考えさせられる
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題名からスパイサスペンスかと思わされましたが、どちらかというと、妻の心理を追う人間ドラマのようでした。
昭和初期、戦争時代の風景が淡々と描かれますが、やはり不穏な空気を醸し出している映像がよいです。
聡子役の蒼井優の演技も素晴らしく、佇まいや口調は時代を感じさせながらも自然で、天真爛漫で凛とした様子は印象深いです。この聡子の変貌振りが、サスペンスというかミステリーというか、見応えがあります。
夫・優作役の高橋一生も、本心が分からないミステリアスな雰囲気で、仲睦まじい夫婦のやり取りにも妙な緊迫感があります。
憲兵・泰治役の東出昌大は、相変わらず不気味な気持ち悪さ(褒め言葉)が漂い、期待通りで良かったです。
クライマックスの、聡子が捕まり証拠のフイルムを憲兵達が見るという場面。
なぜか無言でスーツ姿の人々が集まりテキパキと上映の段取りをするというシュール過ぎる描写は笑えましたが、並行して聡子の異様な迫力も伝わってくるという、不思議なインパクトのある場面でした。
正直、クライマックスのあたりからは、やっぱり裏切られて悲劇のヒロインで終わりか、と思っていました。
しかし、ラストの字幕で、実はこれは聡子も了解済の計画どおり?計画までとまではいかないが聡子はこうなることは覚悟の上?、と、後からじわじわと考えさせられました。
ラストの慟哭は、裏切られた悲しさかと思っていましたが、共犯者の罪悪感なのか?と。
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