劇場公開日 2020年7月3日

  • 予告編を見る

「ロシアンクオリティの証明」アンチグラビティ Minaさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ロシアンクオリティの証明

2021年8月25日
Androidアプリから投稿

ロシアの映画でパッと思いつく作品は、「ナイト・ウォッチ」と続編「デイ・ウォッチ」だろう。それ以外はどうってことない作品が多く、万人の目に触れる様な作品が少なかった。近年、本作を始めとするロシア製のSF作品が多く登場し、日本でも陽の光を当たる時がやって来た様だ。特に本作はそれを象徴するかの様な作品だった。
ロシア版「インセプション」と言ってしまえばおしまいだが、ロシアの作品は格段に映像技術は良くなっている。本作は特に地球上での物理や時間の法則は存在せず、まさに夢の世界の物語である為、物体があり得ない構図で存在していたりするものだ。この設定こそが「インセプション」の様だが、ストーリーはこれまたロシア作品らしく独特な世界観であり、ハマればかなりハマるのではないだろうか。

小難しい説明はそれ程無く、意外にもストーリーはファンタジックである。夢の中に生きる住人と、そこを闊歩する奇妙な生物。地球上では通用する物が通用しない奇妙な世界ではあるが、そこにも一定の法則が存在し、主人公らは冒険を続けるのである。設定等はベタ中のベタな印象だが、普段日本やアメリカの作品では観ることが出来ない世界観や空気感を思う存分味わいつつ、鑑賞する事が出来る。

問題を上げるとするならば、本当に夢の中の出来事というオチだった事だろう。パラレルワールドの中でのユートピア的な表現の方が納得のいく展開だったのではないかと思ってしまう。最後の最後の展開でテンションが落ちた作品はしばらく無かったが、本作はまさにそんな作品である。物語の構成等は好みだったため、悪くはない作品だと思うが、「何か違う」路線に入ってしまった珍しい作品だ。

Mina