「ヘタな邦画よりコメディ」はりぼて ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
ヘタな邦画よりコメディ
作品が素晴らしかったので、『はりぼて』のパンフレットを購入。そのパンフレットに掲載された領収書や旅行費請求書をまじまじと見た時に、私はかつて自分が勤務していた職場を思い出しました。
私がかつて勤務していた職場は、創業100年以上、従業員数は連結で4000人弱のメーカーです。出張旅費(飛行機、新幹線、宿泊費)の精算時には、領収書の添付はしなくてOKだったので、皆、格安チケット屋で飛行機チケットや新幹線チケットを購入し、正規の価格で精算していました。誰も悪いことをしている意識はありませんでした。
ところが、ある管理職の空出張や空ゴルフ接待が発覚してから、流石に全ての精算書に領収書を付けることに。ほとんどの従業員が格安チケットの恩恵を受け取れなくなりました。私が勤務していた職場は、不正が発覚しなかったら領収書添付の義務付けをする事はなかったと思います。なぜなら、ルールを決める管理職もその恩恵を充分に受けていたから。
富山市議会議員の不正は、私が勤務していた職場の感覚と基本は同じだと思います。皆がやっている、領収書明細が無くても良い、出張旅費は知り合いの旅行会社に適当に作って貰ったので良い、細かくチェックする体制もルールも無いetc....
彼らが私が勤務していた会社と違うのは、富山市の税収だということ、領収書を自作する、数字を書き足し桁を変える様な悪質な手口を使っていたこと。
市民の税金を預かる側が、税金に寄生する構図。市民の為の税金ではなく、議員の為の税金になるしくみ。富山市の自民党だけではなく、国政を担う自民党の国会議員も同じ様な事をしているのは容易に想像ができます。国会議員だと、富山市議よりも桁が2桁位違いそうですよね。
ずっと疑問に思っている事が、領収書を提出しなくても良い月額使いたい放題の官房機密費みたいな予算というのは、主要な先進国にもあるのかということです。これ、私が納めている税金、つまり一般企業でいうと私は株主なので、知る権利があると思うのですが。常識的に考えて株主に使途を明かさないなんて、あり得ないと思うんですよね。
今作を鑑賞して、自分の住む自治体の議会がどんなもんかも見たくなりました。見張り&監視してないと、何をやってるか分かったもんじゃない。
日本の失敗は、雇用主であり株主である国民が雇われ人である議員に政治を丸投げして、雇われ人がやりたい放題できる法律を作らせてしまっている事だと思います。馬鹿だと思って、舐められてますよ。
個人的に今までドキュメンタリーフィルム、特に邦画はほとんど鑑賞してこなかったのですが、ここ1年間だけでも、『i新聞記者ドキュメント』『なぜ君は総理大臣になれないのか』そして、『はりぼて』といった素晴らしい作品に出会うことができて、目から鱗が落ちる思いです。
お二人の記者兼監督の方へ最大の拍手を贈ると同時に、YouTubeや動画で良質なメディアを発信していただけたら、サブスクリプションでも1回分でもお金を払います。今作の結末を観たら、流石にTVの限界を感じるので、これからは個人が情報を買う時代になるのだと思いました。