「主人公はフランス」ジュゼップ 戦場の画家 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
主人公はフランス
日本人向きの絵柄ではないが、フランスのカートゥーン風作画を楽しめるという感じだろうか。
ただ、いろいろと暗示的で分かりづらく、チグハグな作品だったと思う。
収容所のシーンは、単調で眠りを誘う(自分は寝てしまった)。セネガル兵の立場も、あいまいだ。
時々、本物のバルトリが描いたと思われる絵が出てくるが、脈絡がなく、どこからどこまでがバルトリ作品なのか分からない。
フリーダ・カーロの登場シーンはガッカリだ。内容がなく付け足しレベルであったし、フリーダが妙に壮健だ。また、トロツキーの話は、必要なかったのではないか。
一番の難点は、憲兵セルジュの視点で進むことだろう。
監督は、バルトリはスペインの共和国兵士であるため、勝手な創作による僭越を避け、同じフランス人の架空の人物に語らせたらしい。
しかしそのために、バルトリを主人公としながら、バルトリが何を考え、何を描き、どう行動したかが分からず、観客は置いてけぼりになり、充実感も得られない。
そこを想像をたくましくして、解釈し提示することこそが、創作映画の役割ではないだろうか?
思うに本作は、映画「ジュゼップ」と言いつつも、強制収容所という、自国フランスの“闇の歴史”についての“贖罪”の映画にちがいない。
バルトリは題材に過ぎず、本当の主人公は憲兵セルジュであり、フランスそのものかもしれない。
フランスの極右にとって好ましいはずはないし、日本で作られれば、某元首相が「反日」と表現し、街宣車が騒ぎ出すのだろう。
静かな炎が燃えている作品である。
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