劇場公開日 2022年6月10日

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「ソ連の国旗が出てこない」FLEE フリー かなり悪いオヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ソ連の国旗が出てこない

2024年5月15日
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アンドリュー・ヘイは映画『異人たち』の中で、死なない限り救われない孤独なゲイの生き様をドラマチックに描いて見せた。🇦🇫から難民として🇩🇰へ逃れた経験のある人物をネタにした監督ラスムッセンの場合、むしろゲイであることが救いになるほど過酷な難民のリアルを、時折実写映像を交えながらドキュメンタリータッチで描いている。

本アニメを鑑賞する前にまず🇦🇫紛争について予習しておく必要があるだろう。
冷戦時代の1978年に成立した🇦🇫民主共和国(🇦🇫)と同国と軍事同盟を締結して介入・侵攻したソ連、それらの政府の政策に反対して総決起したムジャーヒディーンと呼ばれるイスラム聖戦士の間で勃発した戦争である。  (Wikipediaより)
🇺🇸🇬🇧をはじめ、🇵🇰、🇸🇦、🇮🇷のアラブ諸国に加え、当時ソ連と対立していた🇨🇳までムジャーヒディーン側を軍事援助、結果軍事侵攻していたソ連は1989年に🇦🇫から完全撤退。ソ連崩壊の基点となった事件である。

主人公アミンの父親はおそらくこの民主共和国側の人物であり、ゆえにムジャーヒディンの聖戦士にとらえられ処刑されたのだろう。共和国が軍事援助を求めたソ連への亡命を企てたのも、アミン一家に西側のコネクションが無かったからに相違ない。地元住民の🇺🇸🇬🇧に対する不信感も非常に根強く、🇺🇸🇬🇧が直接介入ではなく分離政策をとっていたことも多分影響しているのだろう。この聖戦士の残党が後にテロリスト化していった事実を我々は見逃してはならない。

🇷🇺の警察官が難民を道端でとっつかまえては公然とワイロを要求し、女性難民には集団レイプまでやらかすシーンには、バイデン支持派ならずとも胸糞悪くさせられることだろう。ゴルバチョフからエリツィンにいたるソ連ならびに🇷🇺公権力の腐敗ぶりは目を覆わんばかり。共産主義国家が自由主義を部分的に導入すると、必ずや特権的地位にいる公務員の汚職が蔓延るのである。🇨🇳しかり、🇷🇺しかり、🇷🇴しかりなのだ。習近平やプーチンが強権を発動しえない状況をよくご理解いただけたと思う。

叔父さんが住んでいる🇸🇪に何としても逃れたいアミン一家だが。ソ連の安アパートで、1日中部屋に閉じ籠り🇲🇽のメロドラマをながめながら1年をやりすごす。亡命のための金がたまってさてようやっとバルト海を横断するボロ船に乗り込んでみれば、🇳🇴の豪華客船に見つかって🇪🇪へ強制送還されてしまう。二度目の亡命によってかろうじて単独🇩🇰へ入国することができたアミンは、そこで過去の自分を捨て去らなければ新しい国で生きていけないことを学ぶのである。

そもそもゲイという言葉すらない祖国🇦🇫では同性愛者であることを隠し通し、🇩🇰では家族がまだ存命にも関わらず天涯孤独の身であると偽らなければ生きていけない、とアミンは思い込んでしまうのだ。大学を出て職も見つかり、フィアンセから一緒に住む家を探そうと提案されるのだが、元難民としてのトラウマがアミンになかなかうんと言わせないのである。数年後🇸🇪に住む叔父さんや姉さんと再会したアミンは、自分がゲイであることをカミングアウトする、過去の呪縛から自分を解き放つために。

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