「【性的マイノリティ且つ社会的弱者でもあるアフガニスタン難民に対し、不寛容な態度で接した国、民に対し監督、制作陣が激しい怒りと悲しみを叩きつけた作品。アニメーションの使い方が絶妙な作品でもある。】」FLEE フリー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【性的マイノリティ且つ社会的弱者でもあるアフガニスタン難民に対し、不寛容な態度で接した国、民に対し監督、制作陣が激しい怒りと悲しみを叩きつけた作品。アニメーションの使い方が絶妙な作品でもある。】
ー 冒頭テロップで流れる言葉。”この物語は事実である。だが、本人及び関係者の安全を鑑み・・”
このテロップだけで、観る側は、これから描かれる物語が、現在進行形である事を察する。-
■アフガニスタンで過ごす、幼きアミン(仮名)は、アフガニスタン内戦により、その人生を大きく狂わされていく。
政府は、彼の父を反政府勢力としてみなし、連れ去り、残された母、兄、姉と共に、命懸けで祖国を脱出する・・。
そして、それは彼の長きに亘る難民としての始まりであった。
◆感想
・愚かしき政府(現代で言えば、シリアが代表の一つであろう。そのために、多くのクルドの民が難民になっている事は周知の事実である。)の行為により犠牲になるのは、いつの世でも無辜なる民である。
・アミンやその家族が追いやられる過酷な姿は、観ていてキツイ。だが、この話はアニメーション化されているが事実なのである。
・一度は酷い環境の小舟で逃れるも、彼らは拿捕されて、再びロシアに戻されるアミン達。
ー 監督自身が、ロシアで経験したからであろう。今作では、ロシアの愚かしき警察官たちの弱者に対する様々な行為が描かれている。ー
・漸く、アミンのみが安全に海外に脱出する。(兄たちは、金が無くて留まる・・。)
■異国のデンマークに到着した彼は、長年秘めていた想いを叔父に告げる。
この際の、叔父の行為が染みる。娼婦宿に連れて行ったと思ったら、そこはゲイが集まる場であった。久方ぶりに見たアミンの笑顔。
そう。世界には同性愛を容認する国が、多数あるのである。
■登場人物たちの身の安全を考えた末の、アニメーションの使い方も、観る側に的確にメッセージを伝えている。
前半は、ダークな色調でアミン達が、決死の思いで祖国を脱出する姿を描き、後半、デンマークに到着してからは、明るいトーンの比率が高くなる。
アミンの心象を色彩や画のトーンで伝える手法の見事さよ。
<この作品は、決して遠くの異国アフガニスタンで起こった事だけを描いている訳ではない。
難民に対する接し方や、性的マイノリティの方々の対する法制度を含めた対応状況など。
現代日本でも、クルドの難民たちに対する出入国管理局の愚かしき行為や、同性婚や夫婦別姓を認めない政府、市区町村の多さを観れば、対岸の火事ではない事が良く分かる。
今作は又、アミンが潜り抜けて来た困難な生き方を通して、自由とアイデンティティの大切さを観る側に問いかけてくる作品でもある。
アミンが漸く手に入れた安穏の日々が、末永く続く事を祈りたい。>
あたたかいコメントありがとうございます。
色彩や画のトーン……本当にそうですよね。NOBUさんのレビューを拝見して、自分が受けたイメージがまたひとつ明確になった気がしました。
このようなドキュメンタリーは特に、アニメの向こうの当事者や製作に携わった関係者に敬意を持って鑑賞したい、そう思います。