劇場公開日 2022年10月7日

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「ここまでやんちゃに振舞ってもなんとなく許されるツイ・ハークがちょっとだけうらやましい一作」七人樂隊 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 ここまでやんちゃに振舞ってもなんとなく許されるツイ・ハークがちょっとだけうらやましい一作

2025年9月1日
PCから投稿

ジョニー・トーら7人の香港映画人が、様々な年代、様相の「香港」を描いた一作。

サモ・ハンの若き修業時代を描いた第一話「稽古」は、『七小福』(1988)を想起させるような内容で、結末にはサモ・ハン自身までも登場します。となると彼自身が監督しても不思議ではない内容だけど、本作の監督はティミー・ハン。名字から推測できるように、サモ・ハンの長男です。それを踏まえると、この内容にも納得。

『マトリクス』(1999)などでの活躍で武術監督としての知名度が高いユエン・ウーピンは、老武術家と孫娘との微笑ましくなるような交流を描いており、作風の意外性と語り口の巧さを印象に残しているし、香港返還と男女の別離を重ね合わせたパトリック・タム監督の抒情性など、次々と登場する挿話は、過ぎ去った時代への郷愁に満ちています。

なのに!最後を飾るツイ・ハーク監督の作品の破壊力といったら…。リンゴ・ラム監督なんてこの作品が遺作になったというのに、こんなふざけた、じゃなくて個性的な作品を作っていいのかツイ・ハーク。と混乱と困惑が交錯しはするものの、まあここまでふざけて見せるのも、過度に感傷的になりかねない本作のバランスを取ったのか、あるいは照れ隠しなのかも、と好意的に解釈することにしました。

香港映画ファンには、本作の、特に7作目での急転直下を体感してもらいたいところです!

yui
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