「映画というよりは舞台のライブビューイング」滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie 鵲さんの映画レビュー(感想・評価)
映画というよりは舞台のライブビューイング
ファンのための作品でしかないと思えたが、ファンであり滝沢歌舞伎自体にも足を運んだことがある自分としても、映画としては一切面白みを感じることができなかった。
前半のパートはごちゃごちゃして、何を伝えたいのかわからなかった。一つ一つは面白いし、すごいし、完成度は高いけど、それを繋ぎ合わせると、まとまりがなくごちゃごちゃしていた。ひたすらにダンス、歌、バトン、バレエ、歌舞伎等色々な物が混合しているだけ。舞台と違って照明や音響を使った明確な仕切りがないことと、映像であるが故に様々な場所で取っていたが故に情報量が多すぎた。話がつながってないから、尚更ごちゃごちゃになって、初見殺しでしかない。舞台で見たら感動するだろうけど、映像となると臨場感や壮大さを実際に体感できないから、感動が薄っぺらくなってしまった。
後半の芝居パートは、なんでストーリーテラー?いるの?っていう感じに露骨なストーリーテラーがいた。ウケを狙ってネタを入れすぎたり、長引いたりして、面白みが欠ける。ラストの大量の水を使う場面は、それまでロケだったのにいきなり舞台になって、集中力が途切れた。あの舞台装置を使いたいのは理解はできるが、その欲のおかげで映像的に温度差が発生して、見ていて萎えてしまった。折角ロケまでしてるのに、最後の最後で堂々と舞台に戻してしまって、何がしたいんじゃ、と一周回って笑った。一番気になったのは、月の大きさ。どんだけ月でかいねん、ってツッコミたくなった。
いい食材を使ってはいるが調理に失敗した料理の印象。舞台のライブビューイングとしては楽しめるが、映画として楽しむことはできなかった。ファン以外は楽しめる人がいればいいほうではないのだろうか。
自分は舞台挨拶付で行けたために3000円払っても後悔はないが、舞台挨拶がなければ後悔するレベルだった。ファンなのに何言ってるんだ、と思われるかもしれないが、ファンの中でもこう思っている人がいる意味を考えてほしい。