劇場公開日 2021年5月21日

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いのちの停車場 : 特集

2021年4月30日更新

名優たちが魅せる自分らしい生き方が心に沁みる
共感し、涙し、そして明日への希望が宿る“珠玉の感動作”

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吉永小百合、松坂桃李、広瀬すず、西田敏行……ベテランから若手まで、各世代を代表する名優たちが共演する映画「いのちの停車場」。石川県金沢市にある在宅医療を行う「まほろば診療所」を舞台に、医師、看護師、運転手とそれぞれ立場は違うものの、自分らしい生き方を模索する患者たちに向き合うことで、自らも大きな気づきを得ていく……。

“いのち”というキーワードは、一見すると重厚さが勝ってしまうように感じられるが、本作には人が人を思うあたたかさや、懸命に生きる人たちの姿に勇気をもらえるなど、未来に花を咲かせるポジティブな芽がちりばめられている。

世界中で閉塞感が漂う現在、多くの人が自分自身に深く向き合う時間が長かったからこそ、人の心の痛みに共感し、人からの優しさが心に沁みる。この特集では、名優たちが奏でる心の触れ合いによって、どんなあたたかい気持ちがもたらされるのかを紹介していきたい。


【予告編】命ある時間は、なぜ同じではないのだろう?

つまずいたからこそ気づけた大切なもの
視点を変えることで、人生は彩り豊かに輝きだす

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【物語】エリート救命医が第2の人生で出会ったまったく想像もしなかった医療の形、人に寄り添うということの意味

東京の救命救急センターで“いのちを救うこと”を最優先として働いていた医師・白石咲和子(吉永)は、ある事件がきっかけで故郷・金沢にある在宅医療を行う病院「まほろば診療所」で働くことになる。この診療所では、院長の仙川徹(西田)、看護師の星野麻世(広瀬)らが “患者の生き方を尊重する治療”を最優先にすることを掲げており、咲和子は、これまで経験してきた医療とはまったく違う考え方に遭遇する。

最初は戸惑いを見せる咲和子だったが、東京の病院でともに働いていた医大卒の事務員・野呂聖二(松坂桃李)も運転手に加わり「チームまほろば」の一員として、さまざまな事情から在宅医療を選択している患者たちと接することで、彼らが“生かされている”のではなく、自らの意志を持って“生きている”ことに気づき、そんな人々の力強さに感化されていく。

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さらに、強い信念を持って患者と向き合う咲和子の真摯な態度を目の当たりにした麻世や野呂も、それぞれが抱える過去のトラウマから脱却し、自らの夢や希望を見つけ、新たな一歩を踏み出すのだ。


【テーマ】世界中が自分自身に向き合った1年 “生きるヒント”がちりばめられた感動作

咲和子は、いのちの第一線である東京の救命救急センターで、そのキャリアをいかんなく発揮していたが、ある事件によって病院を追われる形となり、生まれ故郷にある小さな「まほろば診療所」に赴任する。その診療所で働く訪問看護師の麻世も、明るい笑顔が持ち味の女性だが、過去に同乗していた車の事故で姉を亡くすというつらい過去を持ち<いのち>の価値を見失っていた。そして野呂も、親からの大きな期待に応えられない苦悩を抱え<いのち>に向き合えずにいた。

過去になんらかのつまずきを持つ3人が、在宅医療を選択した患者たちの、仕事へのプライドや愛、絶対に他人には看取らせないという強い夫婦愛、生まれ故郷で静かに暮らしたいという郷土愛、懸命にいのちに向き合う親の愛など、さまざまな熱を帯びた“愛”と向き合うことで「自分のこれからの人生をどう生きたいのか」というポジティブな感情に心動かされる。

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この「まほろば診療所」のメンバーたちの変化が、本作の大きな見どころの一つである。彼らの気持ちを追うことで、見ている側は「どんな生き方でも受け入れてもらえるのだ」と自己を肯定された気持ちになる。さらに既成概念に捉われないことで、他者に対しても大らかな気持ちになれるのだ。観賞後、自然と大切な人を思い、心があたたかくなり、誰かと話をしたくなる……そんな力が本作には宿っている。


吉永小百合が初の医師役 松坂桃李、広瀬すず、西田敏行、
各世代の映画賞常連俳優たちが心震わせる演技で魅せる

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【ベテラン名優たちの競演】受けの芝居の吉永小百合、太い幹のような安定感の西田敏行

骨太かつ希望が満ち溢れるテーマを持つ作品をしっかりと支えるのが、各世代のトップを走る実力派の俳優たち。昭和、平成、令和と時代が移り変わっても、常に第一線で輝きを見せる吉永は、1959年に「朝を呼ぶ口笛」でスクリーンデビューを果たして以来、122本目の映画出演作で、自身初となる医師役に挑戦している。

吉永自身も「長年医師を演じてみたかった」と話しているように、彼女なりの「生きていくことの大切さ」がセリフの端々に乗り、患者を見つめる視線の優しさに心動かされる。さらに、メインとなるのは患者ということを意識した受けの芝居も、これまでの吉永の作品とは違う新鮮さが感じられる。吉永演じる咲和子の行動を追うことで、患者たちの思いがストンと胸に入ってくるため、自然と感情移入できるのだ。

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そんな咲和子を大きな心で包み込み、新たな道へ導く西田の演技も物語に安心感を与えてくれる。西田扮する「まほろば診療所」院長・仙川は、大らかでありながらも、もっとも“いのち”に対してシビアな面も持っているが、西田の持つ柔和で太い柱のような存在感が、すべての出来事をポジティブに変換してしまう圧倒的な芝居を見せてくれる。そのほか、咲和子の父・達郎を演じた田中泯の、人物の深淵に迫る圧巻の演技も鳥肌ものだ。


【成島組でさらに覚醒】実力派若手・広瀬すず&松坂桃李が、ベテランとの共演で新たな一面

吉永、西田ら日本を代表する名優たちと対峙する若手俳優たちも実力派ぞろい。親の期待を一身に受けて医学部に入学したものの、医師への道を諦め、複雑な思いを抱きつつも「まほろば診療所」で運転手の仕事をする野呂を演じるのは、日本アカデミー最優秀主演男優賞、最優秀助演男優賞を受賞するなど、いまもっとも波に乗っている実力派俳優・松坂桃李。

劇中に登場する人物のなかで、もっとも観客に近い目線を持つ野呂が、患者へ向ける視線こそがこの作品の観賞後感を決定すると言っても過言ではない重要なキャラクター。そんな難役を、松坂は真摯に青臭く爽やかに演じ、物語に軽やかさを与えてくれる。

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一方、訪問看護師・麻世を演じる広瀬も、日本アカデミー最優秀助演女優賞を10代で受賞するなど、若手女優のなかでもその実力は折り紙付きだ。訪問医療について右も左も分からないまま「まほろば診療所」にやってきた咲和子の教育係的な側面を持ちながらも、人生の先輩である咲和子への人としての憧れを抱くという難しい役柄だが、咲和子と仙川を含め、患者とその家族、そして野呂と、登場人物全員を結びつける接着剤のような役割を絶妙な距離感で演じ切っている。

メガホンをとった成島出監督といえば、人物の奥深くをしっかりと表現することに長けた名監督。段取りやリハーサルを丁寧に行い、俳優にしっかりと役を染み込ませる時間を与えてくれるというが、そんな名匠のもと、松坂や広瀬が作り上げたキャラクターは、いきることへの悩みや葛藤を抱えつつも、最終的には「どんな生き方でもいいんだ」と人生を肯定してくれる魅力的な人物になっている。


【予告編】世代を超える感動のヒューマン医療大作

さまざまな家族の形に感涙すること間違いなし
【レビュー】「自分たちはどうだろう」そんな思いが胸に宿る

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前項では「まほろば診療所」に勤務するメンバーたちの演技の魅力やキャラクターから想起させられる思いについて触れてきたが、本項では、彼らが寄り添う患者とその家族が物語でどんな役割を果たしているのかを述べていきたい。

さまざまな事情から在宅医療を選択する患者たちとその家族。なかでも、もっとも心を揺さぶられたのが、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した「万引き家族」で天才子役と称された佐々木みゆ演じる若林萌ちゃんを取り巻く家族のストーリー。萌ちゃんは小児がんにおかされ、つらい抗がん剤治療を行いながらも「海に行って人魚に会う」ことを夢見て前を向く少女。そんな姿に、「なんとしても良くなって欲しい」と新薬を使った治療を求める南野陽子扮する母・祐子。

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ある意味で、心をかきむしられるような悲しい描写が続くパートであり、ややもすると感動系医療ドラマにありがちな“お涙ちょうだい”的な展開になってしまいがちだ。しかし本作では、萌ちゃんの境遇に同情するのではなく、彼女の思いを叶えてあげようと全身全霊で向き合うことで、希望を持つことの素晴らしさに気づく。

萌ちゃんの家族以外にも、野呂や麻世がさまざまな患者の人生に寄り添う姿は、「自分だったらどうだろう」という気持ちを想起させ、さらに「こうやって生きたい」と能動的に未来に思いを馳せるだけの強い思いが込められている。

単に感動できる、泣ける物語だと思ってみると、いい意味で大きく期待を裏切られる非常に懐の深い物語だ。

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