劇場公開日 2021年5月21日

「駆け足の構成と、小さな違和感の積み重なり」いのちの停車場 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5駆け足の構成と、小さな違和感の積み重なり

2021年5月24日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

現役医師で作家の南杏子による原作小説は、実質的に連作短編集。東京の大学病院で救命救急医として働いてきた主人公・咲和子がある事件を機に退職し、老父が暮らす金沢の実家に戻り、近くの診療所で在宅医として再出発する。

全編を通じて描かれる診療所メンバーや父との関わりを除くと、6人の患者やその家族とのエピソードがまさに短編集のように構成されており、これが少々せわしない。起(患者との出会い)→承(患者や家族との心の触れ合い)→結(過半数のケースで死別)というパターンが患者1人につき15~20分程度で繰り返される計算だ。小説であれば読者は自分のペースで一人一人の死にじっくり向き合えるが、2時間の映画に詰め込まれると、この患者さんが死んで次、次の患者さんも死んでまた次、と駆け足になり、個々の死が相対的に軽んじられてしまった印象だ。原作に忠実に構成するなら、1エピソードが1時間程度の連続ドラマの方が合う気がする。

小さな違和感を覚える場面もいくつかあった。大きな交通事故現場から搬送された複数の重傷者に緊急手術を施す冒頭では、ベテラン外科医・咲和子の口調が妙にゆったりして聞こえる。一分一秒を争うはずの場面で、切断肢などの描写もリアルすぎるほどなのに、吉永小百合の台詞読みに緊迫感が足りない。1945年生まれの吉永の年齢は70代半ばだが、咲和子の年齢設定はおそらく50代くらいだろう。咲和子の父親役に田中泯(吉永と同じ1945年生まれ)というキャスティングにも無理があるが、咲和子を50代とするなら一応つじつまは合うか。

共演に西田敏行、松坂桃李、広瀬すずをはじめ実力派の豪華キャストが揃ったが、ミュージシャン出身のみなみらんぼうと泉谷しげるの演技が気の毒なほど拙く、これもまた違和感。

在宅医療や安楽死といった重いテーマに真摯に取り組んだ姿勢は伝わるし、金沢の風情ある景色を背景に収めた映像も味わい深いが、駆け足の構成に小さな違和感が積み重なり、総じて物足りなさが残った。

高森 郁哉
シャンタルさんのコメント
2021年5月31日

こんにちわ(*^^*)

まだ、この映画を視聴しておりませんが、昨今の日本映画は駄作が多く……。
殊に吉永さんが出演されている映画は観なくともだいたいの察しがつき、Netflixやprimeで観ても【この程度の作品か~(>_<)】と嘆かわしい限りですよね。

シャンタル