「吉永小百合さんを観賞する作品」いのちの停車場 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
吉永小百合さんを観賞する作品
予備情報なしですが、タイトルから命にまつわる話だと予想し、コロナ禍の今だからこそ見てみようと思って鑑賞してきました。命についていろいろと考えさせられる作品で、先日父を癌で亡くしたばかりの自分は何度も涙がこぼれてきました。
主演の吉永小百合さんは、何歳になられたのでしょうか。いくつになっても色褪せない魅力が、本作でも輝いていました。上品な立ち居振る舞い、凛とした佇まい、あふれんばかりの優しさと柔らかな笑顔、彼女が放つオーラが作品世界そのものを形作っていると言ってもいいほどで、彼女の魅力をたっぷりと堪能できる作品でした。
そんな吉永さん演じる、医師の白石咲和子が、在宅医療を通して次々と命を見送る展開がとにかく悲しかったです。脇を固める、松坂桃李くん、広瀬すずさん、西田敏行さん、田中泯さん、石田ゆり子さん、柳葉敏郎さんらの演技も相まって、いったい何度泣かされたことでしょう。
この在宅医療を通して、マンパワー不足、貧困、老老介護、高額な最先端医療、治験の危険性、安楽死等、医療にまつわるさまざまな問題が描かれます。明確な答えが見出せないこれらの問題を観客に提起しているところに、この作品のテーマがあるように感じます。
ただ、少々盛り込みすぎた印象は否めません。一つ一つが大切な問題なのに深く描ききれず、投げっぱなしな感じがして、やや物足りなかったです。特に安楽死に対しては、本作ならではの、あるいは白石医師ならではの考え方や向き合い方を示してほしかったところです。
あと、細かいことですが、カメラの揺れが気になってしかたなかったです。登場人物の不安定な心理を演出するためなのかもしれませんが、これだけ揺らされると目が回りそうで感情移入しづらかったです。