「映像が時折、スチール写真として飾っておきたいくらいきれい」ドンテンタウン とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
映像が時折、スチール写真として飾っておきたいくらいきれい
よく見つけてきたものだ、あの団地。
CG加工はしていないのだろう。
遊園地のような色合いのブランコのある広場。その向こうに見える無機質な低めの団地のある建物ー集会所とか店舗が入っている類の…。申し訳なさそうなほどの人工的な緑。そして画面の1/4位を占める曇天。
ファンタジー的な世界ながら、現実的なとてつもない虚無・倦怠感に覆われた世界。
仮想空間なのか?現実世界なのか?不思議な世界に誘われる。
晴れでもない、曇りでもない日々。
リア充とも言えない、とてもつない悲劇に見舞われているのでもない。
でも、なんかぱっとしない日々。家庭環境からの枷、自分自身に課した枷にとらわれて、底なし沼にいるような、そうでもないような。ミノタウロスの迷宮にいるような、そうでもないような。
そんな中での二人の生活ー何気ない日々が愛おしい?ような、そうでもないような。
そんな雰囲気は良く出ていた。
「生きるって素晴らしい!」的な賛歌は歌い上げない。
カタルシス的なオチもない。
そういうのが好きな人には合う映画。
でも…。60分という長さが絶妙。もうちょっと短くてもいいかな?
色遣いが印象的。
自然光の中の映像、
影のシルエットを使った映像、
色を操作したような映像。
ソラの部屋のインテリアも、少ない家具ながら、趣味がいい。
それぞれに、監督の想いが込められているのだろうまでは察するが、心象風景としてはこちらに伝わってこなかった。
プロットはひねくりすぎ。
なんとなくこういうことがいいたのかな?というのはあるけれど…。
現実は、仮想世界と紙一重ということ?
それとも、あのシナリオライターの頭の中?
少年・少女のエピソードもうまくかみ合っていない…。
もひとつおまけに、あのウォークマンの所有者って…。勝手に第三者に譲渡したらまずいだろうって、そこも仮想現実なのか?
う~ん。頭の中が曇天。
曇りの中の晴れ間のように、印象的なショットだけ、覚えておこう。
(東京国際映画祭2020 屋外上映にて)