「宗教の機能的側面について教えてくれる映画」ザ・ファイブ・ブラッズ tさんの映画レビュー(感想・評価)
宗教の機能的側面について教えてくれる映画
思想の力の根源を教えてくれる映画だった。BLMブームに乗っかって良い気持ちになっているだけの輩に観せてやりたい映画だ。
これは僕の見方だが、ノーマンがどういうつもりで金塊を隠したのか?それは誰にも分からない。ひょっとすると、彼は、とんでもない詐欺師だったかもしれないじゃん?自分に都合の良い論理を振りかざし、金塊を我がものにしようと企んでいたのかもしれない(そう観えるように撮られていた気がする)。
しかしながら、生き残った4人の兵士たちは、結果として正しい行ないをした。それがたとえ共同幻想であったとしても。
なぜ彼らは正しい行ないをできたのであろう?それはノーマンを信じていたからだ。ノーマンの振る舞いに影響を受けたのだ。ノーマンを起点にとして、善意が伝播した。ノーマンが死んだ後も、彼らの中にそれは残ったのである。
この映画は宗教についての映画だと思ったんだよね。優れた思想ってのは、人間関係の中で伝播し、心の底にずっと残る。そのような力を持っていないのであれば、それは思想ではない。
思想や宗教というものは、思想の内容そのものにはあまり意味がない。教祖がどんな人間であるか?教祖が信者からどう見えるか?が本質なのだ。
思想の内容が正しいからといって、能動的にその思想を信奉するという振る舞いには、あまり意味がない。なぜなら、「能動的」に思想を信奉しているのである限り、いつでも「能動的」に逃げ出せるから。
本当に思想に信奉している者は、極めて受動的に信奉しているだ。そのような信奉者は、思想に信奉せざるを得ない、そうする以外に道はないのだ。このような信奉者は、ちょっとやそっとでは思想を捨てない。我が身が滅びようと、その思想を貫徹しようとする。
だからこそ、ときに思想は救いとなり、また、危険となるのである。