「バブル期の記号的要素が「横道世之介」と共通する」ジオラマボーイ・パノラマガール 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
バブル期の記号的要素が「横道世之介」と共通する
本作を観始めてから中盤ぐらいまで、既視感のある状況や展開が散見されると思っていた(ちなみに岡崎京子の原作漫画は未読)。物語上の本命の相手とは別の小悪魔的な年上美女、バブル期に呼称をよく目にしたいわゆる「コールガール」、ホテルのボーイのバイトで目にする大人の世界…。このあたりでようやく「横道世之介」だと気づく。岡崎の89年の原作が吉田修一の2008年の小説に影響を与えた可能性はあるが、「横道」の時代も80年代後半であり、先に挙げた要素がバブル期の記号として偶然両作品に描かれたのかもしれない。
「横道」とは好対照のガール・ミーツ・ボーイものだが、出会った男子の目は別の女性を見ていて…と一筋縄ではいかない恋と成長の物語。都心のウォーターフロントの高層住宅と下町の一軒屋という男女の住居を含め、高低差を活かした画面構成はハイティーン特有の浮遊感を補強するが、時代を現代に移した効果は今一つだったか。
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