「絵がまったく走っていなかった…【ネタバレあり】」神在月のこども とみしゅうさんの映画レビュー(感想・評価)
絵がまったく走っていなかった…【ネタバレあり】
思いっきりネガティブ評価です。
尊敬する三宅隆太さんが脚本を担当しているということで、かなりの期待を持って観に行った。
ストーリー展開は充分に楽しめた。
母親を亡くした主人公が、自分と母とをつなぐ「走り」を通じて、母の思いや自分自身の思いを改めて知り、まさに明日につながる一歩を踏み出していく。
日本古来の神話(神在月、韋駄天、鬼、因幡の白兎、八百万の神など)の要素を絡めて、「出雲に馳走を届ける」という力強い縦軸を生み出している。
道中で出会う兎や鬼との友情や助け合いも、ストーリーのスパイスとしてうまく機能しているように思う。
だが、しかし…
肝心のアニメがまったくもって走っていない。
キャラの表情が乏しく、魅力を感じない。
諏訪の龍もまったくもって迫力に欠けるし、空を舞うシーンも爽快感が著しくない。
カンナと母親が一緒に走るシーンも、走ることの苦しさや爽快感が伝わってこないので、クライマックスでカンナがもう一度走り出すためのモチベーションとして機能していないように見えた。
ストーリーとしては機能しているが、アニメとしては機能していない。
アニメの快感の原点ともいえる「静止画が動く喜び」「絵に命が宿る喜び」が、本作からはほぼ感じられなかった。
これはもう、本作の作画監督と僕との相性が決定的に悪かったのだろうと思う。
ともあれ、日本神話と今の日本社会とをリンクさせて、現代ならではのストーリーを紡ぐことは可能なのではと改めて思った。
予算も時間もかかるにせよ、それこそ日本版MCUだって作ることはできるはず。
「鬼滅の刃」の大ヒットでも分かるように、日本の神話にはそれくらいのポテンシャルがあるのではと思う。
本作とは縁がなかったけれども、同様のアプローチで日本ならではのストーリーを持ったアニメ作品が今後も生まれていってほしい。