「これはウディ・アレンのNYへのレクイエムなのか?」レイニーデイ・イン・ニューヨーク 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
これはウディ・アレンのNYへのレクイエムなのか?
近年、ロンドン、バルセロナ、パリ、ローマとヨーロッパ各地を旅してきたウディ・アレンが、久々に故郷ニューヨークに戻って撮った最新作には、以前のようにコアなニューヨークはなぜか登場しない。近隣の大学に通う男子学生が、ガールフレンドを連れて案内する(予定だった)故郷ニューヨークは、ホテル・ピエールにセントラルパークにホテル・カーライルにメトロポリタン美術館と、NYビギナー用にベタなのだ。それは、話の流れに沿っているから妥当なのだが、生粋のニューヨーカーであるアレンが、あえて誰もが思い描くスポットをカメラで追うのは、彼なりの決別の気持ちがあったのではないかと想像する。つまり、養女に対する性的虐待疑惑によって、自由に映画を作れなくなった自分自身へのレクイエムを、馴染みの風景に重ね合わせたトリックなのではないかと。結果論かもしれないが、そう思う。しかしながら、単純な話を寸分の隙もなく展開させ、いつものように、最後には人間の本能がもたらす情景をさらりと見せるその手法は、朽ちてなお、粋。まだまだそれを味わいたいのだが、さて、どうなるか?
コメントする