劇場公開日 2020年7月3日

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「三角関係の至福」レイニーデイ・イン・ニューヨーク しんぐちゃんぐさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5三角関係の至福

2020年7月5日
iPhoneアプリから投稿

40代の若造にウディ・アレンを語る資格はない。20年は早過ぎる。ただただ自分の知識と教養の無さを痛感するばかり。それでも根拠のない期待をしてしまう。自分の後半生も捨てたもんじゃないぞと。大いに学ばなければならないし、必ず行かなければならない。何処へ?勿論、ニューヨークへ。

「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」は、今をときめくティモシー・シャラメを擁し、小道具としてスマートフォンは登場するものの、描かれるのはクラシカルな古き良きニューヨークである。舞台はカーライルホテルやメトロポリタン美術館。マクドナルドやスターバックスは背景としても画面には映らない。

郊外の大学に通う生粋のニューヨーカーである主人公が、アリゾナ出身の彼女に地元を案内することから始まるドタバタ劇であるが、とにかくキャラクターが古い古い。今どきこんなに知的でウィットに富んだ会話を楽しむ大学生カップルなんて、アメリカには存在するのだろうか。とても魅力的である。

人生を斜に構えて薀蓄を語る大学生はアレンの分身だろうし、スランプに陥る有名映画監督にもモデルがあるのだろうが、随所に飛び出す辛辣なジョークが理解出来れば、もっと映画が楽しめるのに勿体ない。とはいえ、有名人との遭遇に舞い上がる意識高い系の女子大生を演じるエル・ファニングが可愛くて、ほとんどギャグではあるが、出会うおじさん皆が惚れてしまうのもさもありなんと思う。

そして、セレーナ・ゴメス演じるマンハッタン在住の元カノの妹を忘れてはならない。こましゃくれて可愛げのある都会の女性を好演。エル・ファニングとの対比が面白い。多分に男性目線の映画であり、登場人物が多過ぎてあらぬ方向へも持って行かれるが、唐突に訪れる美しいラストシーンで再認識するのは、三角関係の至福である。本当に凄いぞ、84歳。

しんぐちゃんぐ