「【”ふらりふらりと街を彷徨い、”路上”のありとあらゆる物を被写体にし、次々と小型カメラでシャッターを切る、飾り気のない男”を描く。造本過程も面白き、ドキュメンタリー作品。】」過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”ふらりふらりと街を彷徨い、”路上”のありとあらゆる物を被写体にし、次々と小型カメラでシャッターを切る、飾り気のない男”を描く。造本過程も面白き、ドキュメンタリー作品。】
ー 森山大道と言えば、ギラギラとした眼が印象的な粒子の粗いモノクロの”三沢の犬”が、頭に浮かぶ。その写真から、この方は写真の求道者のような寡黙で、気難しい方だろうと思っていた。ー
◆森山大道のデビュー作『にっぽん劇場写真帖』の復刊PJを描いたドキュメンタリー。
・齢、80を超えても、小型カメラを手に秋葉原などの歓楽街や路地を彷徨い、興味を惹かれた被写体を次々にカメラに収めて行く姿。
その姿からは、求道者というより、猥雑な現代の大都会の誰も見向きもしないようなモノに対しても興味を持ち、シャッターを切る若々しい感性が感じられる。
・”共に写真界に殴り込んだ盟友”と自ら口にする、写真家、中平卓馬との思い出を懐かしそうに語る口調は、優しくも寂しげだ。
・森山は、街で出会った見知らぬ人々から、サインを求められ、”一緒に記念撮影を・・”という申し出にも、一切嫌な顔を見せず飄々と応じる。
彼と握手し、彼の写真に如何に影響を受けたかを、嬉々として語り掛ける人々。
・フランスで、『にっぽん劇場写真帖』の復刊PJで製本した本を嬉しそうに買い求めるフランス人達の長蛇の列。
そして、フランスでもサインや記念撮影に快く応じる姿。
・今作では、PJの進行とともに、造本過程(北海道で、原木を切り出すシーンから始まる。)も描かれるが、ここも実に面白い。造本家という職業があったとは・・。
・ニエプスの写真を、ベッドの横の壁に貼っている、森山大道。
成程、それでフランスから、復刊を販売か・・。
<プラクティカルな写真家、森山大道。その姿は、人間が暮らす何気ない風景や、人間そのものをさり気なく被写体にする、心優しき器の多くな男であった。
造本過程も、(特に、生産技術。)面白きドキュメンタリー作品。>
<2021年7月3日 刈谷日劇にて鑑賞>