「紐解けば刺激が香り立ち」過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道 室木雄太さんの映画レビュー(感想・評価)
紐解けば刺激が香り立ち
遠い遠い記憶を辿り…広げ覗き込み、甦らせていく作業と、「今日の路上」を確認して歩む時間の交差が、この路の巨人が現役である所以で興味深い。あゝ、きっとこの人とは、街の何処かで時がシンクロしていたのではないか、そう感じられる程に、馴染みのエリアでカメラを構えているのだ。“on the Road”のTシャツを見逃していたのは私だろう。伝説の噂話は先走るものであり、思いの外自由で縛られず、そして優しい素顔が印象的だった。今も我々は見過ごしているだけで、街が刺激的でない時代は無く、喚起も喪失も欲望も常に渦巻いている場所なのだ。帰り路の新宿は、ことのほか訴えかけてくる様だった。そして、明日も彼の視線に捉えられて行くのだろう。
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