劇場公開日 2020年11月13日

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「後ろめたさと開き直りのラブホテル。」ホテルローヤル ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5後ろめたさと開き直りのラブホテル。

2020年11月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ラブホテルが舞台の映画と聞いて、もっと生々しい感じかと思っていたら、意外にあっさりしていて意外だった。原作者の自伝的小説というが、内気な女子を通して見たラブホテルであるため、激しい性愛は興味の対象ではないようだ。父親は略奪婚だし、母親は自分を捨てて若い男と逃げてしまう。男女の営みに消極的な考えを持つのもしょうがないかもしれない。美大の受験に失敗し、不本意ながら父親のラブホテルを経営することになった娘にとっては、現実を真正面から受け入れられず、ここは自分がいるべき場所ではないという思いがずっとあったのであろう。波瑠の感情を押し殺したような演技は、心の動きが読みにくいが、雅代(=桜木紫乃)になりきった演技と評価できよう。
ラブホテル内で起きた心中事件をきっかけに、事態は一変する。この事件を自分に引き寄せて考える事で、人生の傍観者だった雅代は、今まで嫌ってきた父のラブホテルを肯定し、自分の人生にも肯定的になれそうな場面で終わる。まさに「止まっていた時間が動き出す」という感じである。
ラブホテルの室内はかなり良く作り込まれており、地方都市のラブホテル事情みたいなものは興味深かった。しかし心情はすべて内面的な表現が中心であり、全体的に印象が薄くなっている。波瑠の、本来とは少し違う落ち着いた演技が見られただけでも収穫ありとしよう。

ガバチョ